ごみ問題の概要と亀岡市の事例から考える勉強会「ねえ、循環経済(サーキュラー・エコノミー)と、川を綺麗にする活動が、いったいどうつながるの?」〜プラスチックは果たして悪者なんだろうか〜(前編)
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京都府亀岡市
ごみ問題の概要と亀岡市の事例から考える勉強会「ねえ、循環経済(サーキュラー・エコノミー)と、川を綺麗にする活動が、いったいどうつながるの?」〜プラスチックは果たして悪者なんだろうか〜(後編)

2021年4月30日、PLASTIC LOVEチーム主催の勉強会がオンラインにて開催されました。

 

この勉強会は、今回で第2回目。運営に携わるPLASTIC LOVEチーム事務局の宇山 浩さん(大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・教授)、倉増 京平さん(株式会社ライフ&ワーク 代表取締役)、今西 まゆさん(サステナビリティカレッジ事務局)が、経済学者でもある原田 禎夫さん(NPO法人プロジェクト保津川)を講師に迎え、先生の活動のお話を通して、プラスチックごみ問題に関しての理解を深めるとともに、私たちには何ができるかについて語りました。

 

後編では、原田先生の京都府亀岡市の活動・取り組みのお話に焦点を当てていきます。

​\前編はこちらから!!/

ごみの量や種類を可視化することで効率ある清掃活動が実現

原田先生(以下、敬称略):先ほど(前編参照)紹介した『ごみマップ』というアプリで、ごみの地図を作りました。どこにどんなごみがどれぐらいあるんだろうということを、日本で初めてインターネット上でごみの地図を作ったんです。

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原田 禎夫(はらだ さだお)さん:プロジェクト保津川代表理事 大阪商業大学公共学部准教授/公共経済学、財政学が専門。京都府亀岡市在住。近年深刻な問題となっている海や川のプラスチック汚染について、内陸部からのごみの発生抑制の観点から取り組むとともに、生まれ育った保津川をフィールドに筏流しの復活や天然鮎の復活、内水面漁業の振興など川の文化の再生と伝承に取り組んでいる。

私の住んでいる町内の3本の川を、皆で調べたから分かったことなんですが、川全体を100とすると、90%のごみが真ん中の川に集中していることがわかりました。


特にごみが多かった500mの区間を清掃しようということで、自治会で年に3回清掃活動を行っていただけることになりました。その結果ごみも大幅に減りました。

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亀岡の「トップリーダー」たちの宣言で、自治体単独でもできる「ごみ削減」に向けた取り組み

京都府亀岡市で、夏休みに「こども海ごみ探偵団」というのをやっています。国際的に使われている調査手法を使って、川のごみを調べているんです。すると、一番多いのがペットボトルで、レジ袋も非常に多いというのが分かりました。

 

ペットボトル対策というのは、残念ながら自治体単独ではできません。しかし、レジ袋に関しては自治体ごとに対策が取れることから、私の住む亀岡では、プラごみゼロ宣言というのを発表しました。

 

ごみを減らしましょう、マイバック・マイボトルを持ちましょうという理念的なお話は、地域の自治体もされていますし、首長さんでも宣言されています。

 

でもそこからさらにもう一歩踏み込んで、社会のルール、国で言えば法律、地域で言えば条例を作っていこうと思ったら、これも議会の承認が絶対必要なんですね。

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プラごみの問題を一緒に取り組んでいこうよということで、亀岡市では市長さんだけでなく議長さんにも一緒に宣言していただき、2021年1月1日から、レジ袋禁止条例が施行されました。

 

両方が宣言されているというのは、今のところは他では聞いたことはなくて逆に言えば、理念だけでとどまっているところが多いんですね。

地域での河川での「地道な清掃活動」が信用を重ね、レジ袋削減につながり、輪を広げる

では、レジ袋削減に向けた取り組みをなぜ亀岡で展開できたのか。一つは、我々は毎週・毎月川で清掃活動を行っているので、信用というのを得られてきたのかなと思います。


また、学校や幼児園での環境教育も積極的に展開しています。子育て支援団体と連携し、子供でも持てるようなエコバッグとか巾着袋づくりも行いました。確かにレジ袋禁止は反発もありましたが、様々な団体・企業の皆さんの後押しもあって、条例施行につながりました。

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亀岡市で2021年1月1日からスタートしたレジ袋禁止条例。市内のスーパーやコンビニ、ファーストフード店や個人商店にもレジ袋はありません。亀岡市のスーパーのレジ袋辞退率は、98%で、コンビニのレジ袋辞退率の亀岡市内は93%を超えています(全国平均は約75%)。なお、辞退されなかった方は紙袋をお買い求めになっています。

亀岡市で始まった「プラごみゼロクーポン」が急増する『コロナごみ』への対策に

実際、今分析しているんですが、各県庁所在地のある市町村にデータ提供を依頼したところ、2019年と2020年の比較で、特に容器包装のプラごみに注目すると、1割程度ごみが増えている計算になりました。

 

これまで多くの自治体さんはごみを減らすことに一生懸命取り組んで来られました。その中で1割増えているので、かなり大きな影響と言わざるを得ません。実際、亀岡市でもプラごみの回収量が増えました。

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そんな中で亀岡市でスタートしたのが『プラごみゼロクーポン』です。参加加盟店は91店舗。マイバッグやマイ容器を持って行く、あるいはスプーンやフォークを断るなどすると、10円分のクーポンが1枚もらえます。今もこの取り組みは続いています。私はこの話を国連でも報告させていただきました。

 

また、おいしい水プロジェクトというのも行なっています。mymizuというアプリがあるんですけれど、そこに載っているお店にマイボトルを持って行くと無料で給水してもらえます。


そのアプリを作られた「一般社団法人Social Innovation Japan」と亀岡市とで、自治体とは初めてのパートナーシップ協定を結んでいただきました。そして一緒に、市内のいろんなお店で無料で給水できる仕組みを作りました。

サーキュラー・エコノミーという考え方がプラスチックや石油依存からの脱却になるだけでなく、資源としての付加価値を高めることになる

なぜ脱プラスチックなのかということを、最後に復習でお話ししたいと思います。プラスチック問題は、汚染だけが原因ではありません。気候変動の問題を考えるときに、プラスチックは可能なかぎりリサイクルしていくことが求められています。

 

よって石油に依存した様々な産業というのは、これから成り立たなくなってきます。そういう中でサーキュラーエコノミーという考え方が出てきています。

 

以前の大量生産大量廃棄やリユースエコノミー(循環型社会)とは別のものです。リユースエコノミーは可能な限りリサイクルするけれど、最終的にどうしようもないごみ・埋め立ても出てしまいます。

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サーキュラーエコノミーというのはそこをゼロにして、資源に変えていこう、言い換えるとお金に変えていこうという話です。

 

何か一つの方法でプラスチック汚染を解決できる魔法はありません。国に任せきりにするのではなく、なぜやらなきゃいけないのか、何をやらなきゃいけないのかというように当事者意識として捉えていかないとダメなんです。

 

社会全体で価値を共有して、本当にいろんな取り組みを総動員してやっていかないと、この問題は解決できないでしょう。言い換えれば、それができたときには、新しい産業の芽がしっかり育っていくと思います。

森や海の保全が、結果として「栄養塩類」を適切に供給することになる

今西さん(モデレーター:以下、敬称略):ここからは参加者の方との質疑応答・意見交換タイムです(質疑応答の中から抜粋)「森林や海の保全は、川を綺麗にすることにつながりますでしょうか?」と質問をいただいていますがいかがでしょうか?

 

原田:もちろんつながります。例えば、森を保全をしていくことで、水源が涵養(かんよう)され、川が枯れない。少々の渇水でも川が枯れないということになりますし、栄養塩類が適切に供給されるようになりますから、それは川も海も豊かにします。

 

それと、海の環境を守ることで生物が豊かになります。例えばアユやサケなど、海と川を行き来する生き物の動線を保持することで、栄養塩類が陸に戻っていくんですよね。


まさに森林川海というのはつながっていて、今それがあちこちで、人間の体でいうと血栓を起こしているような状態です。それを取り除いてやって、健康な血液を流すのと同じように、健康な水を流していくのが大事かなと思います。

面白いと思うエコや感謝の気持ちを抱き続け、さらに官・産・学の連携こそがサーキュラーエコノミーの実現を加速させる

今西:ありがとうございます。続いて、「亀岡から始まっているサーキュラーエコノミーで、他にも面白い取り組みがあったらぜひ教えてください」とありますが先生いかがですか?

 

原田:保津バッグというものがあります。亀岡はパラグライダーが盛んなんですが、安全のために、一定年数経つと廃棄処分していたんですね。そのパラグライダーの生地を使ってエコバッグにしたものが保津バッグです。

 

それが地域に雇用も生んでいます。既に5,000個販売しており、パリでも売り始めています。さらに、東京の国立新美術館のファッション誌展でも展示していただいたりしています。

 

今西:なるほど。面白いですね!最後に「サーキュラー・エコノミー実現のために、企業と市民団体・行政や教育機関にはどのような連携があると、より加速したり楽しく進められますか?」とコメントをいただいていますがいかがでしょうか?

 

原田:一つは、とにかく一対一じゃなくて三角の関係を作るように心がけています。そうすることで、常に議論が客観視できるんですよね。もう一つは、相手に対して攻撃的にならずに、「ありがとう」という感謝の言葉を常に伝えるようにしています。

 

今西:宇山先生、何か一言ありましたらよろしくお願いいたします。

 

宇山先生:原田先生は、我々技術の人間とはやはり見る目が違いますね。お店の経営者だけでなくメーカーさんも巻き込んでいかないと変わらないということですよね。

 

その人たちをいかにつなげるか、ということが大事だと感じました。今日は本当にいい勉強になりました。ありがとうございました。

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宇山 浩(うやま ひろし)さん:PLASTICLOVE事務局 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・教授/高分子材料化学の専門家として、中小企業をはじめとする様々な企業と研究・開発を進めている。“プラスチックの可能性を広げるために人生を賭ける”研究者

今西:倉増さん、次回のご案内も含めて一言お願いいたします。

 

倉増さん(以下、敬称略):次回は、生ごみを燃やさずにどうやって堆肥にして循環を作っていくのかということで、LFCコンポストというものを発明した、たいら由以子さんにお越しいただきます。

 

僕も自宅で生ごみの堆肥化など実験してみているのですが、とても楽しいんです。ごみ袋も減って一石二鳥です。

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倉増 京平(くらまし きょうへい)さん:PLASTICLOVE事務局 株式会社ライフ&ワーク代表取締役/ビジネスプロデューサー。顧客企業のデジタル領域におけるマーケティング戦略立案から実行までを永く手掛ける。 社会課題の解決』と『企業活動』の融合を目指して、様々なリソースを活用しながらその架け橋となるような事業創造型の活動を精力的に取り組んでいる。

倉増:また、今までなかなかできていなかったのですが、Facebookグループで皆さんとの対話の場所を作ろうと思っています。

 

そこでアフターディスカッションのようにできたらいいなと思っています。ご希望の方にはグループへ招待させていただきます。一緒に楽しんでくださる仲間を募集中です。

編集後記

今回のお話を通して、プラスチックをただ悪者扱いするのではなく、うまく循環させていく仕組みを作ることが、これからの社会にとって必要なことであると感じました。

 

PLASTIC LOVEチームの方では、今後もこういった勉強会を開催されていくようです。お話の中にもあったように、一緒に活動する仲間も募集中とのことです。

 

この記事を読むことで、一人でも多くの方がこの問題に関心を持ってくださることを願っています。

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企画・著作:町おこしロケーションタイムス編集部

【取材データ】

2021.04.30 オンライン取材

【監修・取材協力】

・プラスチックラブ事務局

​・倉増 京平 様

 

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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