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地域を越えて空き家活用の未来に想いを馳せる。地域プレイヤーたちの座談会

広域・全国

今回は空き家の活用最前線で活動するお三方からお話を伺いました
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お話を伺ったのは平野さん(三条市)、今川さん(夕張市)、加藤さん(逗子市)。

2023年4月6日、「空き家課題」に取り組む3人によるセッションが行われました。


3人はそれぞれ取り組む地域も職業も年齢もバラバラ。北海道・夕張市で空き家課題に取り組む今川和哉さんは札幌市出身の前夕張市市議会議員。司法書士・行政書士・宅地建物取引士の専門資格により、夕張市だけでなく全国の空き物件の利活用、物件の紹介などを行っています。


大学生の平野彩音さんは2023年より休学。新潟県・三条市に「地域おこし協力隊」として移住し、空き家再生の現場で勉強をしています。


神奈川県で空き家課題に取り組む加藤太一さんは空き家を力を合わせて再生させていくコミュニティ「空き家レンジャー」を創設し、空き家の再生に取り組んでいます。


今回はまちロケがモデレーターとなって「空き家課題」へ向き合う3人の登壇者の座談会をレポートでお届けいたします。

事業に注力しながら経営者の右腕のような存在を発掘して人財育成をすることが、移住や転入をスムーズにできるスキームが形成されて安心できる暮らしづくりに

まちロケ:北海道夕張市を拠点に活動をされている今川さんは、今年の春まで市議会議員を務めながら地域と密接した生業を営んできました。ご自身の事業を通して今後まちのためにどうされていくのでしょうか?


今川さん(以下、敬称略):今後は自分自身の事業に注力しながら、自分と対等に仕事ができる右腕のような存在を発掘し、いずれは後継者として地域への移住者のために物件相談ができるような人を作っていきたいです。


今川 和哉(いまがわ かずや)さん:夕張開発株式会社 代表取締役・司法書士・行政書士いまがわ事務所 代表・宅地建物取引士・前夕張市議会議員/札幌市出身。夕張市唯一の不動産会社の経営にとどまらず、『司法書士・行政書士・宅地建物取引士』の専門資格の連携で、様々な不動産相続ケースに対応しながら夕張市の空き物件の処理や物件の紹介などを行う。また、まちの人口減の危機感と自分が夕張市で住居や事務所を探すのに苦労した経験から市議会議員に立候補し、平成27年の統一地方選挙にて初当選。


なぜそれをやるかというと自分が移住する時にものすごく苦労したからです。このまちはかつて炭鉱で栄えた地域で、炭鉱会社が電気も医療も住宅も含め、全てのインフラを握っていました。


そんな公営のインフラが非常に多く民間のインフラが非常に少ないという特性のまちが夕張です。当時はアパートを探そうと思っても不動産会社が市内になく、当然、SUUMOやホームズなど家を探すサイトにも物件はありませんでした。


どの物件が賃貸物件なのかも、どの家が空いているのかも分かりませんでした。地域の有力者や居酒屋の人に聞き込みをしてようやく物件を借り入れることができましたが、こんな苦労を同様に人に求めていくと移住者も増えないですから。


まちに住み続けることができるきっかけを創り、地域への流入を増やすビジョンで楽しく暮らす人づくりへ


まちロケ:なるほど、時代の流れとともに地域だけでなく課題も新たに生まれて来るのですね。では今川さんがそのような取り組みを行うことによりどのような変化が起こっていくのでしょうか?


今川:私に続いてくれる人が生まれれば、これから夕張に移住したい人が部屋探しの際に困らないと思いますし、安心してまちに住み続けることができるきっかけとなり、結果として地域への流入を増やすことになるでしょう。



まちロケ:担い手ってすごく重要ですよね。まちに興味を持って移住し、まちづくりを始めていらっしゃる方も増えてきていますが、多分そういう人たちに共通しているのはまちに住むことを楽しんでいる気がします。


義務感にとらわれて 、最初は「やるぞやるぞ」って思って発信もすごい積極的になっていたんですけど、2年目になるとだんだんトーンが下がって疲弊感を生む。地域によってはまちを出て行ってしまう人もいる事例もあります。


地域創生って暮らしていた中で生まれる交流やコミュニティが生きがいになって、気づいたらできているようなものだと思います。


大学と空き家の地域活動の中で生まれた葛藤が、現地で実践的な学びを得る。そこが生きていくための生業を見い出すアクションを起こすきっかけに


まちロケ:当メディアのインターンとして長期間参画してくださった平野さん、大正大学地域創生学部に在籍しながら3年生を終えた時点で休学して新潟県三条市に「地域おこし協力隊」制度を活用して移住し、空き家再生の現場で勉強をされていますが、とてもユニークな事例で周辺の方々も驚いているのではないでしょうか。


そんな平野さんへお伺いしたいのですが、平野さんはなぜ大学を休学してまで国の制度(地域おこし協力隊)を活用して地域へ住むことを決意したのですか?三条市に移り住むまでに心の中で色々と葛藤があったんじゃないですか?


平野さん(以下、敬称略):そうですね。いちばんの理由は高校からずっと空き家に関わる活動をしてきて、これを仕事にしたいと思っていたからだと思います。

平野 彩音(ひらの あやね):一般社団法人 燕三条空き家活用プロジェクト(新潟県三条市地域おこし協力隊)/三重県松阪市飯高町出身。三重県立飯南高等学校在学中に空き家片付けプロジェクトなどに取り組み、卒業後も地域と関わりを続けて空き家問題などの地域課題に取り組む。大正大学 地域創生学部を3年生終えた時点で休学。2023年度より新潟県三条市の地域おこし協力隊として空き家の活用の現場に携わっている。


平野:私は空き家について勉強はしてきましたが、勉強すればするほど、「空き家」で自分は何がやりたいのか分からなくなって。どうやれば食べていくためにお金をもらいながら空き家を通して仕事をしていけるのか知りたくなったんです。


そこで実際に現地に住みこんで勉強させていただくことで将来像が明確になると思って休学することを決めました。


もともと休学中に滞在予定だった南魚沼市で地域実習をしているときに、三条市で一般社団法人 空き家活用プロジェクトが立ち上がるから三条市で地域おこし協力隊として休学しないかと声をかけていただき、地域おこし協力隊として本気で空き家のことを学ぶ決意をしました。


将来、地元の三重県松阪市で空き家のことを仕事としてやりたいと思っているので、今地域おこし協力隊を経験できているのはとても大きいと思っています。


「やってみたいこと」より「できること」。現場で学びと実践の繰り返しで日本で一番空き家に詳しい大学生になる


まちロケ:そうですよね。空き家の課題はどの地域においても聞かれることですが、マネタイズはどのようにしていくかを落とし込まないと自分が食べていくこともできなくなりますよね。一年間限定の協力隊というお話ですが、今いる地域で何をやってみたいですか?


平野:とにかく空き家を活用するときに必要な知識や経験をどんどん増やしていきたいです。「やってみたいこと」より「できること」を増やしたいと思っています。今までは空き家のことをざっくりとしかわからず、実際に空き家活用する時にどういう視点が必要なのか、キャッシュフローすらも見えていませんでした。



現在、三条市や燕市の空き家の現場にも入って間もないですが、家の作りなどの専門知識を踏まえた上で、大工さんと面白い活用方法を話している現場を見るのがとても刺激的学びになって今後ももっと知識を増やしていきたいと思っています。


まちロケ:平野さんご自身のSNSでも「日本で一番空き家に詳しい大学生になるための研究活動を行っています」と自負されていますよね。とてもハートが熱くなりますよね。正しい正解はないと思います。自分なりの答えを見つけていい方向に行けばいいですね。


共助の精神を育む空き家再生コミュニティが地域外との結びつきを強くして新たな創発を生む


まちロケ:ここまでお二人のお話を聞かせていただきましたが、最後は加藤さん。空き家を力を合わせて再生させていくコミュニティ「空き家レンジャー」を創設し、空き家の再生のプレイヤーでもありますよね。


加藤さんはこれまで神奈川・湘南地域を拠点に活動されてきましたが、、北海道でも活動を広めたいと言っておられました。上記のことを踏まえ、今、平野さんや今川さんのお話を聞いて何かご一緒できることがあるとすれば何でしょうか?


加藤 太一(かとう たいち)空き家レンジャー代表/空き家をDIYなど力を合わせて再生させていくコミュニティ「空き家レンジャー」を創設。「楽しく」を大切にしながら結果的に空き家が救われて地域活性になればと思い活動中。


加藤さん(以下、敬称略):そうですね。「空き家レンジャー」の活動は神奈川県でのリアルな活動が中心で、DIYでみんなでワイワイとする活動によって仲良くなって共助の精神が醸成されて手応えを感じています。ただ、オンライン上でなかなか遠隔の人たちとの助け合いができていないのが課題です。


平野さんには地域おこし協力隊、今川さんにとっては夕張市にと、それぞれ空き家レンジャーが何を持ち寄れば貢献できるのかを教えてほしいです。


今川:逆に僕は権利関係が複雑な空き家の相談に乗ることができると思います。全く連絡がつかない物件とか全部相続放棄しているとか、所有者が不明であるもの、また会社名義の空き家があるにもかかわらず会社の代表者もいない物件を我々の事務所は得意としています。権利関係が分からない物件を取り扱いたい時には遠隔でもうちの事務所はできます。


専門知識を持つ人財が集い時間や労力を持ち寄ることで、面白みを生み出して結果として空き家問題が解決されていく


加藤: 今川さんは専門家なので、僕が助けてほしいことはたくさんありそうですが、ご自身が抱えている課題はありますか?


今川:結構夕張で空き家が欲しい人はわがままなんですよね。「人口急減地域だからタダですぐ住める物件がたくさんあるだろう」と言われるんです。 


「過疎地だから安い」と仮説を立ててくる顧客と「こんなに安いなら売りたくない」という空き家所有者のミスマッチが起きています。地域のことを尊重してくれる買い手が現れてくれるとありがたいです。


加藤:夕張に限らず「空き家という時点でもう安いんでしょ」って思う人は大多数なんです。だからそこを逆手に取ってそこを利用して集まってくる人たちと一緒に盛り上げて、結果的にそれで空き家問題が解決されれば良いのではと思っています。



加藤:「空き家」を使って自分のやりたいことをやれるから、空き家に食いつく人は多いと思います。空き家レンジャーはそういう出会いの場を一番重要視して仲間を集め、神奈川県では関係はできつつあります。平野さんはどうでしょう?


平野:私は今住んでるところは元々前の洋品店の倉庫だったので全く完成していない状態で空き家の仕事に同行しながらDIYもしています。


まだ右も左もわからない状態で空き家の建築士さんやデザイナーさん、宅建など専門的な知識を持ってる人にわからないこと聞けたり、地域おこし協力隊員同士で真面目な話だけではなく困りごとやわからないことなどをフラットに話せるような場があれば会話からつながりとかが生まれるんじゃないかと思います。


今川:いいですね。夕張市にも移住と空き家担当として人財がほしいと思いました。


空き家課題に関係人口が地域という垣根を越えてアイデアを持ち寄って挑戦できる場ができていく。その先にあるものとは


加藤:実際、そういう動きは空き家レンジャーの地域おこし協力隊の中で起こっています。まちロケさん、地元企業が地域おこし協力隊を呼ぶのはありなんですかね?


まちロケ:例えば都市部に住んでる企業人を地域に派遣したり、地域のまちづくり団体に委嘱する国の制度を活用するといった様々なやり方があると思います。アイデア出しをみんなで実践すれば妙案が出てくるのではないかと思います。


加藤:そうですね。空き家レンジャーで2週間に1回「オンライン作戦会議」と題してお題を取り上げて集まるメンバーみんなでアイデア出しをしているので取り上げれば面白いかもしれないです。


アイデア出しをしているとその地域が気になってくるんですよ。そしてだんだん現地に行ってみたいという気持ちが湧いてきて、現地ツアーの企画につながることもあります。


例えば、今度鎌倉の1,200坪の森の古民家の床の解体をみんなでやることになりました。やっているうちにだんだんと参加者のめり込んできて、参加者がこの空き家どうにかしたいとSNSで発信してくれたり 、そこで借り主が見つかった流れも起きています。 


今川:アイデア出し、いいですね。昭和天皇が泊まった建物も、温泉も今は空き家となっています。そして、市の施設も多くが空き家となっていますから、その点夕張はとても可能性があります。


加藤:面白いですね。ぜひオンライン作戦会議をやりましょう。



結び~Ending

空き家の未来の活用に想いを馳せた3人。それぞれの経歴やフィールドは違えど「空き家」というテーマに対し、それぞれの気づきがあったようでした。


取材から1年が経過し、今川さんは夕張での事業を承継する人へ託し、新たな挑戦へ。また平野さんは大学へ復学し協力隊で学んだことをアウトプットしていけるよう日々試行錯誤中。そして加藤さんは空き家活用のために多くの人たちと共創し、面白い場づくりを提供。


時間が経過してそれぞれ取り組んでいることは変わってもゴールは皆同じ。このような人が地域から多く排出されるような世の中になってほしいです。

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■企画・著作
佐々木 将人 (Masato Sasaki)
就職を機に兵庫県から北海道に移住した社会人。
人好きで、人×地域をテーマにした記事制作が得意。

【取材データ】
2023年4月6日(オンライン) 
【監修・取材協力】
夕張開発株式会社
・今川 和哉様
一般社団法人 燕三条空き家活用プロジェクト
・平野 彩音様
空き家レンジャー
・加藤 太一様

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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