
-まちの取組-
今回は学生団体
かりピースに
お話を伺いました

若者が主体的に地域に参画して人と人が
つながる居場所をつくる。
学生団体かりピースの挑戦
愛知県刈谷市
今回の企画では、学生団体「かりピース」を運営するコアメンバーの想いを座談会形式で掘り下げました。
地域づくりに熱意を注ぐ若者たちが、どのような背景や動機を持って活動に取り組んでいるのか。そして未来に向けてどのような展望を描いているのか。
ジモトを拠点に活動する小田さんと井手口さん、それぞれの視点からお話を伺いました。
中学生の頃に父の仕事の関係でアメリカに住んでいたことで考えるようになったサードプレイス
中野(モデレーター): 今回の企画は、かりピースの社会人メンターとして参画しております中野が、学生団体かりピースを運営する若者コアメンバーの想いを座談会を通して言語化し、その内容を記事化してWebへ掲載します。それでは、まず今日お越しくださいましたかりピースのお二方に自己紹介をお願いします。

中野 隆行(なかの たかゆき)町おこしロケーションタイムス ファウンダー/愛媛県松山市出身。地域での写真活動を機に出会った地域の人たちの素晴らしい価値観に触れたことがきっかけで、自身の好きな旅をテーマに、全国の地域で暮らす人たちの何気ない姿を価値として発信する地域メディア「町おこしロケーションタイムス」を立ち上げる。
小田さん(以下、敬省略): 名古屋大学で文化人類学を専攻しています小田です。現在3年生ですが、地域活動に取り組んでいて、「家や職場以外の第三の居場所」をテーマに卒論を書こうと考えています。刈谷市在住ですが、中学生の頃に父の仕事の関係でアメリカに住んでいたことがあり、外国人との交流にも興味があります。
また、高校生から大学生まで茶道部に所属しており、抹茶と和菓子が生きがいと言えるほど好きです。抹茶は私の人生の中で大きな指針になっている存在です。本日はよろしくお願いいたします。

小田 麻琴(おだ まこと)さん:南山大学人文学部人類文化学科3年/愛知県刈谷市出身。地域活動に取り組んでいて、「家や職場以外の第三の居場所」をテーマに卒論を書く予定。小学3年生から中学2年生までの約4年半、父の仕事の関係でアメリカに住んでいたことがあり、外国人との交流にも関心を示す。高校生から大学生まで茶道部に所属しており、抹茶と和菓子が生きがいと言えるほど好き。抹茶は人生の中で大きな指針になっている。
SDGsや世界情勢に関心を持つようになり、近代の紛争や新しい分野としてまちづくりにも興味を示す
井手口さん(以下、敬省略): 名古屋外国語大学2年生で、世界教養学部に在籍しています井手口です。もともと世界の文学や音楽、映画といった国際文化的なことを学んでいましたが、最近はSDGsや世界情勢に興味を持つようになり、近代の紛争についても勉強しています。
もともとまちづくりという分野にはあまり縁がなかったのですが、最近新しい分野として興味を持ち、さまざまな場所でまちづくりを学びたいと思い、活動を始めました。これからもっと深く学んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。

井手口 薫(いでぐち かおる)さん:名古屋外国語大学 世界教養学部2年生/愛知県刈谷市出身。世界の文学や音楽、映画といった国際文化的なことを学んでいたが、最近はSDGsや世界情勢に興味を持つようになり、近代の紛争や戦争についても勉強中。好きな音楽は母親の影響でミスターチルドレンやジュディ・アンド・マリーなど、少し前の世代の音楽をよく聴いている。
中野: はい、ありがとうございます。では、小田さんと井手口さんの関わりについて教えてください。
井手口: 実は私たちが出会ったのは今年の8月です。「カリヤクエスト」というイベントがあり、そこで初めて参加者同士として出会いました。
中野: なるほど、ありがとうございます。他の学生さんたちも同じような感じなのでしょうか?
井手口: はい、そうですね。「カリヤクエスト」の主催側に友人がいたメンバーもいましたが、ほとんどは初対面だったと思います。

異国で自分を奮い立たせることがきっかけで自分の世界観が広がる
中野: ありがとうございます。お二人の子ども時代について伺いたいと思いますが、小田さんは子ども時代はどのように過ごされていたのでしょうか?
小田:はい、私はアメリカにも住んでいたんですが、もう小学生の頃とか本当に人見知りで自己紹介で泣いてしまう性格でした。
でも、異なる環境に行くと泣いても誰も助けてくれないので、自分から頑張らないといけないと感じるようになったんです。

自己紹介や友達に話しかけることも、積極的にやらないとダメだなと気づいたのが小学校3〜4年生くらいの頃でした。
高校3年生で、母に勧められてボランティアに参加したら、それが意外と自分に合っていて、気づけば4年続けていました。
その中で、人と出会って交流することで「世界がこんなに広がるんだ」と感じてすごく面白いなと思えました。結果的にいろいろな活動に参加するようになり、主体的に行動するようになったんだと思います。
あらゆるコミュニティにおいてコーディネートすることを身に着ける存在と主役よりも黒子として舞台袖でサポートする役割を担う存在
中野:素敵ですね。地域活動への主体的な参画ってすごく大事なことですが、なかなかそこまで至らないことも多いですよね。では、井手口さんのこれまでの生き方についても伺いたいのですが、どうでしょうか?
井手口:そうですね、私はどちらかというと、小学校や中学校、高校で委員長を務めたり、吹奏楽の部活では部長や副部長をやることが多かったです。
自分がリーダーに向いているかどうかは分からないですが、みんなで集まって何かを成し遂げるのが好きでした。
その中で印象に残っているのは中学校の部活の話ですね。中学3年生のときに顧問の先生が異動されて新しい先生が来たのですが、それをきっかけに意見が割れることがありました。
私たちが今までやってきたやり方と新しいやり方をどう折り合わせるかたくさん話し合いを重ねました。その結果、部活の雰囲気も少しずつ良くなり、最終的にはこれまでで一番良い結果を出すことができました。

中野:ありがとうございます。まさにその経験が今の活動にも生きているのではないでしょうか。
では、小田さんにも同じ質問をさせていただきますが、いかがですか?
小田:高校の文化祭で舞台袖で演者さんを誘導する係を担当したときの経験が印象に残っています。
私は人前に出るのが苦手なので、舞台で司会をしたり、責任の重い仕事をするのは無理だと思っていました。
でも、舞台袖で輝く人たちを支える役割が自分に向いていると感じたんです。その経験から、サポート役として人を支えることにやりがいを感じるようになりました。
お互いの足りないところを補いパズルのようにうまくかみ合う関係性を構築する
中野:素敵ですね。まさにサポートする役割が今の活動にもつながっていると感じました。そういう小田さんから見て、井手口さんのいいところって何ですか?
小田:そうですね。井手口さんは初対面のときから、すごく人懐っこい印象がありました。たとえば、初対面の場でニックネームを決めようという話になったときに、みんなが迷っている中で、井手口さんが「じゃあ『まこっちゃん』でいいんじゃない?」と提案してくれたりして。
自分に足りないところを補ってくれる存在なので、とても助かっていますし、これからも一緒に活動していきたいなと思っています。
井手口:小田さんは今おっしゃっていただいた感じなんですけど、本当にお互いに足りない部分を補い合っている感じです。
例えば、私は裏方の作業、例えば細かい仕事などが少し苦手で、うまく進められない部分があります。そういった部分で支えてもらっています。自分が「どうしよう・・・」と詰まった時に、後ろから支えてくれているという安心感があって本当に助けられていると思っています。

距離感というハードルを超えて助け合い平和を祈ること
中野:ありがとうございます。そんな井手口さんですが、これからどんな生き方をしていきたいですか? まずは個人としての生き方、そしてその後で「かりピース」をどのようにしていきたいか、二つお伺いしたいと思います。
井手口:はい、そうですね。私個人としては、少し前から漠然と思っていることがあります。多くの人の役に立つ仕事をしたいなと思っています。
もちろん、どんな仕事でも誰かの役に立っているとは思うのですが、今、学校で国際的なことについて学んでいる中で、例えば貧困問題や戦争の犠牲者の方々について知る機会がありました。
その経験から、自分が直接目にすることのできない遠い世界にも困っている人たちに少しでも手助けができたり、生きやすい世界を作る一人になれたらと思っています。

人との縁を大切にしながら、情報発信力と巻き込み力で活動の裾野を広げて心地よい場所をつくること
中野:ありがとうございます。社会課題やソーシャルな部分に強い関心を持たれているのかなと感じました。ただお金を稼いで豊かな生活を送るよりも、人の役に立つ仕事をしたいという思いが伝わってきました。では、「かりピース」についてはどのようにしていきたいですか?
井手口:今はどちらかというと、内側の管理や運営をしっかり固めてきた段階かなと思います。これからはもっと外に発信していきたいです。
現在は周りに巻き込んでもらって「かりピース」がある、という感じが強いのですが、今後は自分たちから発信して、もっといろんな人を巻き込んでいきたいと思っています。楽しいことや面白いこと、いろいろな活動をやっていけたらと思っています。
小田:私は個人的には、今ある縁を大切にしながらも、新しい縁をどんどん作っていきたいと考えています。この縁に関わる人たちをもっと巻き込んでいきたいですね。
社会人になってからも新しい縁がつながっていくとは思いますが、今ある縁を自分たちだけで留めるのではなく、もっと多くの人を巻き込んで、心地よい場所にしていけたらと考えています。

学生生活の多忙な中で課題は新たな担い手と写真や雰囲気をSNSでどう情報発信していくか
中野:ありがとうございます。「かりピース」の活動を外に発信して、例えば市内の高校生や市外の人たちを巻き込んでいくことも重要ですね。
今後の成長が楽しみです。ところで、「かりピース」は現時点でコアメンバーが5人いらっしゃいますが、今後新しい若いメンバーが必要だと思います。そういった取り組みについてはどのように考えていらっしゃいますか?
井手口:そうですね。本当にそれが今の課題かなと思っています。現在、コアメンバーは5名ですが、それぞれ就活や留学などで忙しくなる中で、私たちの後を追う人を探していく必要があると感じています。
そのために、SNSをもう少し活用していきたいと考えています。SNSは多くの人に見てもらえるという良さがある反面、情報量が多く、一つの情報に注目してもらえる時間が短いと思います。そのため、「パッと見て楽しい、面白そう」と感じてもらえるような写真や雰囲気を伝えるビジュアルを意識したいです。
中野:なるほど。SNSを活用するのは大事ですが、運用方法やマーケティングもきちんと考えていく必要がありますね。ところで、「かりピース」の現状で足りないリソースについてもお伺いしたいのですが、小田さんはいかがですか?

小田:はい、そうですね。やっぱりコアメンバーが5人で、オンライン上で打ち合わせをするというのが現状です。SNSの活用や外部への宣伝活動については、まだ行っていない状況です。
学生だけでは、マーケティングの方法や、例えばワークショップを開催した際にどのように人を呼び込むかといった知識が全くないので、そこが一番のネックになるかなと思っています。
オンラインを活用しながらも取り残されるメンバーが出ないように、いかにキャッチアップできる活動にしていくか
中野:ありがとうございます。あと、必要なものとして「お時間」も重要ではないかと感じたのですが、その点はいかがですか?
小田:そうですね。打ち合わせもオンライン上で日程調整をすると、時間の都合や予定の重複でなかなか進められていない状況です。確かにおっしゃる通り時間がないというのが一番の問題点だと思います。
中野:オンラインでやられていることはむしろ良いことかなと思います。もちろんリアルで会えればそれが一番ですが、5人で時間をすり合わせるのは難しいですよね。それでは、お二方が「時間をどのように作りたいか」について、何か考えがあれば教えてください。
井手口:今の段階では、全員が揃うことは難しく、2~3人でも集まれるときに話す形で進めています。
これまでLINEの投票機能を使い、2週間分の候補日を提示して調整してきましたが、それでも合わないことが多いです。学業やアルバイト、他の予定が重なるとやはり時間を合わせるのが難しい現状です。
放課後のような温かい雰囲気を目指しながら家や職場以外の第三の居場所をつくることが今後の目標
中野:なるほど。そのような状況の中で、来年以降どのように成長していきたいと考えていますか?小田さんにお聞きしたいです。
小田:私が大学で研究していることとして共有したいのが「サードプレイス」で、そうした場を提供しながら学生や社会人の方に興味を持ってもらえたらと思っています。
どうやって主体的に呼びかけていくかはまだ模索中ですが、活動に少しでも興味を持ってもらえれば嬉しいです。
井手口:小田さんに付け加える形ですが、「放課後のような温かい雰囲気」を目指しながら活動しています。興味がある方は気軽に参加していただきたいです。

結び-Ending-
「かりピース」の取り組みを通じて、地域づくりの本質が「人と人のつながり」にあることを改めて実感しました。若者たちが主体的に動き、それぞれの得意分野を補い合いながら課題に向き合う姿勢が印象的です。
また、SNS活用や行政との連携といった具体的な施策の提案も、活動を次のステップに進めるための重要な要素だと感じました。
特に「サードプレイス」というコンセプトは、現代社会において必要性が高まっているテーマであり、地域住民や若い世代に共感を呼ぶ可能性を秘めています。「かりピース」の取り組みがさらに広がり、新しいつながりや居場所を提供するモデルケースとして成長することを期待しています。

■企画・著作
中野 隆行(Nakano Takayuki)
地域での写真活動を機に
地域の人たちの価値観に触れたことがきっかけで
このメディアを立ち上げる
【取材データ】
2024年12月20日
【監修・取材協力】
学生団体 かりピース
・小田 麻琴様
・井手口 薫様
【編成・編集】町おこしロケーションタイムス編集部
取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。