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-まちの取組-

今回はタタタハウスへ
集う人たちに
お話を伺いました
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徹底討論!都市とローカル、どう繋がる?これからの日本を考える!
~多様化する地域との関わり方と人に影響を与える価値の創造~

愛媛県伊予市×東京都世田谷区

様々な視点からみる地域創生の課題に向き合い、根本的に大切な繋がりを考えると、住む地域や年齢は違っても、想いは同じだからこそ話せる内容が詰まっています。


今回は東京に拠点を置いて、地域の素晴らしさを伝える都会視点と、若くして地域に移住をして地域の素晴らしさを東京に発信する地域目線で地域と「どう繋がっていくのか?」をテーマに東京都世田谷区尾山台にあるタタタハウスで徹底討論。


都市部出身で地域へ家族と移住した冨田 敏さん(愛媛県伊予市移住サポートセンター「いよりん」代表)と、東京で地域の魅力を発信する高野 雄太さん(一般社団法人 おやまちプロジェクト 代表理事/タタタハウス店主)、そして、大学4年で地域へ孫ターンで移住した上田 沙耶さん(愛媛県伊予市役所 企画振興部地域創生課 会見年度任用職員/双海FAM 代表)が、都心とローカルが繋がる重要性と、難しさについて紐解いていきます。

移住のタイミングはそれぞれ違っても、その先に見える光があるから今もなお地域に根付いている


冨田さん(モデレーター:以下、敬称略):今日はよろしくお願いします。僕は愛媛県伊予市移住サポートセンター「いよりん」で移住コーディネーターをしている冨田です。元々は東京都世田谷区出身で仕事も都内の広告会社に務めておりました。2011年の東日本大震災が起こったのを機に会社を辞めて、地域おこし協力隊制度を愛媛県内で早い時期に導入した伊予市にそれを活用して移住しました。


冨田 敏(とみた さとし)さん:愛媛県伊予市移住サポートセンター「いよりん」代表

東京都世田谷区出身。2011年の東日本大震災をきっかけに勤めていた広告会社を退職し、総務省の地域おこし協力隊制度を活用して愛媛県伊予市(双海地区)へ家族で移住。愛媛県内で初期に協力隊制度を利用したパイオニア的な存在。現在は移住相談員として地域外からの人をマッチングさせる取り組みや行政と協働し、移住者のサポートも行っている。


上田さん(以下、敬称略):愛媛県伊予市の双海地区で地域商社を立ち上げて活動している上田です。2020年の4月から横浜から愛媛県伊予市に地域おこし協力隊制度を活用して移住をしました。今年で3年目です。元々は青山学院大学に通っていて、大学4年生のタイミングで移住をしています。


上田 沙耶(うえだ さや)さん:愛媛県伊予市役所 企画振興部地域創生課 会計年度任用職員/双海FAM 代表

愛媛県出身。青山学院大学卒業。大学4年時に総務省の地域おこし協力隊制度を活用して祖父母の住む愛媛県伊予市(双海地区)へ移住。双海町の人たちに焦点を当てて紹介するローカルメディア「ふたみ図鑑*1」を立ち上げ、双海地区の玄関駅前でゲストハウスと喫茶「POPEYE」や地域商社を開業させ、多くの若者をまちへ呼び込んで全国へ双海町を売り込む。


 *1 ふたみ図鑑

instagram>https://www.instagram.com/futami_zukan/

Twitter>https://twitter.com/futami_zukan

Facebook>https://www.facebook.com/futami.zukan/

YouTube>https://www.youtube.com/channel/UCcAkaT5mG-LvWHzQB2yduMA

国立国会図書館>https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031459428-00


商店街で世代をまたぐ洋品店から多様性を重視した地域の想いに応えるコミュニティスペースへ


高野さん(以下、敬称略):こんにちは、東京の世田谷区尾山台でタタタハウスの店主をしている高野と申します。この場所は昭和33年から僕の母方の祖父・祖母がタカノ洋品店という名前で商売を始めたのが発祥です。時代とともに洋品屋が厳しくなり、小売業としては少しずつ縮小して地元の小・中学校の体操服を売ったり、文房具屋さんも始めていました。


高野 雄太(たかの ゆうだい)さん:一般社団法人 おやまちプロジェクト 代表理事/タタタハウス店主

東京都世田谷区出身。生まれも育ちも世田谷の尾山台で祖父祖母から続いている尾山台商店街の洋品店の3代目。時代の流れに伴い近年店舗をリノベーションしてコミュニティスペースへ変えて尾山台の人たちとローカルを結ぶハブ役を担いながら大学や行政と協働してまちづくりを行っている。


高野:去年思い切ってお店をリノベーションして、飲食業やレンタルスペースも始めました。まちのお年寄りや小さい子どもたちがふらっとやってくるコミュニティスペースにしたいと考えています。


「タタタ」の由来は、「多」という漢字が元になっています。このお店は多様性で溢れ、もはや表現できないくらい 多くのことが起きて多くの人が来るという意味をこめて漢字で崩して、この文字をつくりました。



数字で物事が決まる都心と優しさに触れられる地域に差を感じて、「越境」という選択を取り進学を意思決定する


高野:僕には子供が3人いて、高校1年生の次男が地域みらい留学*2という制度を活用して東京から愛媛県内子町(小田地区)の小田高校の分校に入学したんです。 


*2 地域みらい留学

自分が住んでいる地域以外の公立高校に進学できる国内留学制度。留学できる地域の多くは、いわゆる地方の田舎町。過疎や少子高齢化などで子どもの数が減少している地域ですが、自然や歴史、人との触れ合いなど、都会ではなかなか体験することができない貴重な教育的価値がある地域でもあるという。


親が言うのも恥ずかしいのですが、次男は3人兄弟の中で一番性格がいい子なんです。家のお手伝いとかもすぐやってくれるし、お年寄りからちっちゃい子供までちゃんとお話ができたり友達にも恵まれているんです。


ただ勉強は人並みですが、東京は数字で測れる人に優位性がある世界がどうしてもあって、いい部分が伸びるような進学ってないのかなって考えていたんです。色々探してたらその地域みらい留学って制度があることを知ったんです。


本人も寮生活をしてみたい意志もあったので、前向きな話になっていきました。学校を探しているときに、小田地区が候補になっていました。僕が仕事で行く機会もあり、次男もついてきて小田の人たちの優しさに触れて、その土地に決めました。愛媛県には元々繋がりがあったわけではなく、本当に偶然でしたね。


冨田:スポーツ留学ともう一つの選択肢として地域みらい留学が選択肢に増える時代になるといいですね。


上田:今の時代、通信制高校という選択もいいかもしれないですね。早く経験した方がいいことがいっぱいあるから。



地域資源を価値として都市部にプロモーションすることとターゲティングの難しさ


冨田:双海は一次産業が大多数を占めるまちですが、海にいる漁師さんやその親御さんを僕は何とか応援したいと思っていて、その人たちを地域資源としてプロモーションしたいと思っていますが、そこを価値としてお金を寄せていくのはなかなか難しいです。


上田:東京で双海を売り込むことは、良いこともあるし難しいこともあります。 東京は競合が多いですし洗練されたものがありすぎて、どうしたら選ばれるのかをこの1年間タタタハウスをお借りして試行錯誤しています。


タタタハウスにきてくれる人は地域の商品にアンテナを貼っていて感度が高い人たちばかりです。その中で購入してくれた人が「美味しかった」と言ってリピーターになってくれるのが嬉しいです。


冨田:都市部の人に地域の商品を売りたいのは人口が多いから確率的に高く買ってくれる考えですか?どういった人たちをターゲットにしていくのかとても気になるところですが。


上田:そのターゲティングが難しいなと思ってます。立ち止まってくれる人は身内が愛媛だったり愛媛に行ったことあるとか何かしらの関わりがある人たちが多いのでその人たち以外にも裾野を広げる施策が必要でまだまだこれからなんです。



ビジョンを描き続けるためには事業計画を形にしながら収益を得て、まちに愛着を持ってもらうために魅力を引き出すこと


冨田:私も今は愛媛にゆかりがあるから、愛媛のものを見ると自然に手が伸びますよね。地域の商品をいかにして買ってもらうかを考えるための実証実験の意味合いも含めて東京に来るという意義もあるのでしょうね。


高野:でもやりたいことは商品を売ることじゃないですよね。目的は双海という上田さんの大好きなまちを皆さんに知ってもらいたい、遊びに来てもらいたい、あわよくば移住してもらいたいと思ってるんじゃないですか?


上田:そうですね。ただ、今は好きなまちで暮らすためにも事業計画をしっかり立てながら自分自身が食べていけるよう収益を得ていかなきゃと考えてます。


冨田:なるほど。上田さんの想いである「誰もが『双海最高!』と叫べるようになること」というビジョンを描き続けるためには、ボランティアやプロボノレベルで取り組んでいくだけでは厳しいですよね。


それなりに収入も得ながら地域を盛り上げるには、初期投資で後で回収するしかないのでやはり稼いでいかなきゃいけないところのジレンマに苦しむのは避けては通れないんですよね。



地域の関わりしろを創っていくために都市部のアッパー層を関係人口として巻き込むことで地域資源の付加価値を高める


高野:タタタハウスでは今年だけで地方都市の交流イベントを多分10回以上実施してきた中で、愛媛は4回関わりを持たせていただきました。


その中で分かったことは、地方移住のためには地域との関わりしろを作っていかないといけないことと、地域の人が地域資源の価値に気づくことが必要ですね。


そして、関係人口になりうる人は、時間にもお金にもある程度余裕があるアッパー層ではないかと。タタタハウスがある世田谷区はそういった方がたくさん住んでいて、かつ、目利きができるんです。 


例えばその人たちが東京で買う愛媛みかんの加工品が千円以上の高い値段設定をしても安いと思うわけですが、その反面、ローカルではお金をほとんど出さずに手に入るのが当たり前なので、それが地元ではあまり出回らないギャップがあることも分かりますね。



タタタハウスが地域と地域を繋ぐ接点になることが、ローカルの良さを浸透させる場に


高野:タタタハウスではそんな地域の開発商品をプロモーションするために色んな地域の方々がポップアップをやってますが、とてもいいことだと思っています。僕は、地方に講師としてお呼びいただくこともあるんですが、滞在時にいただくご飯も美味しいし人も優しい。


自然は豊かで豊かな暮らしが全国にたくさんあるんだっていつも驚かされるんです。僕は尾山台が大好きだから、ここの人たちにも地域の良さを知って欲しいんです。


地域の人にポップアップをしてもらうことで、まちの人が「こんな町があるんだ」「こんな美味しいものがあるんだ」「こんなにいい人がいるんだ」と新たな気づきや刺激を受けることが当たり前になる形を創りたい。そして、タタタハウスが、尾山台と域外の人を繋げる場でもありたいです。



国の取り組みを背景に田園回帰の流れに乗りながらも、都会と地域にあるコミュニティの濃淡の差という余白を持つことが地域で楽しく暮らす秘訣


冨田:総務省のアンケートで都内に住む20代から40代の人の4割がいつか移住したいと思っていることが分かっているように、最近は移住したい人が増えており、田園回帰 *3 による人の流れが起きているのが事実です。


国も「地方の力を今一度」をスローガンに地域を元気づけるために都会の若者をローカルへ送り込む施策として様々な取組を行っています。そのおかげもあってか、伊予市でも令和2年ごろのコロナの前の年から、伊予市への移住相談を私たちが受けただけで約300件あって田舎に住みたい人が増えているのを体感しますね。上田さんは、双海を都会と比べてどう思いますか?


 *3 田園回帰

過疎地域において都市部から人の移住・定住の動きが活発化している現象


上田:たまに東京に来るぐらいがいいなと思っています。双海は海が綺麗だし山も近くで、空気も美味しいし車の音も聞こえない。


双海は挨拶が聞こえるまちなんです。例えば通りかかった人に「こんにちは」と声をかけてみかんあげるとか、井戸端会議がいろんなところで生まれたりと時間にもゆとりがあるのも素敵だなと思います。


ただコミュニティはとても濃いため若者からするとちょっと疲れるところもあるかもしれません。 噂話が回っちゃうとか性格が合わなくても仲良くしなきゃいけないとかね。そういうときは都会に戻れるコミュニティを持っておくといいですね。



多様性という選択肢を発信しながら、地域の良さを共有して関係人口を創出するビジョンとは?


冨田:僕も都会暮らしをしていた人が田舎に行くことがいいなと思っていて、そのままずっと田舎にいるよりも、何でも全て揃っている東京で暮らした経験があるとまた田舎暮らしは活きてくると感じますよね。田舎は何もないけど都会にないものがなんでもあるところがあります。



高野:現代は、いい意味でも悪い意味でも本当に多様な時代だと思うので、都会にずっといて幸せな人たちはそれでいいとも思います。ただそうじゃない人も若者を中心にたくさんいると思うんですよ。だからいろんな選択肢があるってことがすごい大事ということを発信していきたいですね。


ただ、選択肢って自分から取りに行かないと出会えないからタタタハウスでは、機会を作って皆さんのその選択肢を広げる機会を作りたいと思っています。


そのきっかけは美味しい食べ物とか美しい景色とかをみんなで共有して関係人口に繋がることがビジョンだと思いますね。


繋がってさえいれば「そういえば選択肢あったな」ってなるはずだから、みんながまずは交流できる場を大切にしていければいいなと思っています。




結び-Ending-

地域を元気づけたいと思っている町の外の人もたくさんいる中で、そういった人たちが持つ収益化の難しさという問題点が共通しているのではないかな?と喚起されるディスカッションだったと思います。アッパー層に働きかけないといけない気持ちも共感できます。


国、まち単位で取り組んでいる内容がもっと認知の高いものになるための取り組みが必要なのかと思いますね。地域みらい留学とかめっちゃいいと思いました!

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■企画・著作
工藤 菜穂(Naho Kudo)
過去より今。今より未来にワクワクする人生にするために
インプットとアウトプットを繰り返し、
将来は女性選択肢が増える社会づくりと、
地方・地域の魅力発信のブランディングをしていきたい。

【取材データ】
2022.12.11 現地取材
【監修・取材協力】
タタタハウス (タカノ洋品店)
・高野 雄太様
愛媛県伊予市移住サポートセンター「いよりん」
・冨田 敏様
愛媛県伊予市役所 企画振興部地域創生課(地域おこし協力隊)
・上田 沙耶様
東京都市大学 都市生活学部
・滝本 美奈代様
※現地取材においては感染対策を徹底の上、取材を行っております。

【資料提供】
滝本 美奈代様

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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