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時間を投資して地域の担い手を育みまちを盛り上げること
~規模が小さくても幸せな漁協を目指す先~

富山県朝日町

今回は脇山正美さんと
那須彩乃さんに
お話を伺いました
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左上写真の左側>脇山 正美(わきやま まさみ)さん:JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合) 代表理事組合長

富山県朝日町在住。まちづくりのキーパーソンの一人。富山で最も小さな漁協ではあるものの、知識や経験を生かし、漁協という枠組みを越えて朝日町全体の地域活性化を実現するべく、持続可能なまちづくりを行なう。

右下写真>那須 彩乃(なす あやの)さん:NPO法人きっかけ食堂 東京スタッフ/東京都出身。大正大学地域創生学部卒。地域に滞在してカフェの運営や地域創生の在り方を学んでいる。「宮城県南三陸町で若者と地域を結ぶカフェを創る」ことが夢。

左上写真の右側>平野 彩音(ひらの あやね):大正大学 地域創生学部3年 町おこしロケーションタイムス インターン

地域を盛り上げていくためには、地域内外の方々がより良い関係性を持つことが必要になります。そういった「関係人口」について学び、考えることはこれから必要不可欠なことではないでしょうか?


町おこしロケーションタイムスでは、2022年5月に富山県朝日町でインターン生の地域実習を実施。まちのキーパーソンや地域との交流を行う中で取材をいくつか行い記事として発信しています。


中でも本記事では、関係人口を受け入れる脇山 正美(JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合)さんと、地域実習や地域活動に力を入れている那須 彩乃さんのお二人から、その重要性や価値をお伺いしました。


今回、取材を行った場所は脇山さんがリノベーション中の空き家。完成後はまちを訪れる人の地域活動の拠点として活用する予定。脇山さんのご自身の時間とお金をかけて関係人口に込められた想いとは。

関わる側の工夫と受け入れる側の覚悟があって、初めて「関係人口」が築かれる


平野(モデレーター:以下、省略):今まで地域で取り組まれてきたことについてお伺いしたいです。


那須さん(以下、敬称略):大学1年生の時に宮城県の南三陸町で、どうやったら南三陸町の観光分野を推進していけるのかを考える地域実習を経験しています。


大学3年生の時には、南三陸町にて1週間の期間限定で、地域で頑張る人と高校生が出会えるカフェを開きました。


平野:脇山さんは、関係人口となる地域外の人を受け入れる立場として、工夫していることはありますか?


脇山さん(以下、敬称略):受け入れやすい体勢をとるためには、まず「その人は何をしたいのか?」「どれくらい本気なのか?」「自分たちはどれくらい応援できるのか?」をはっきりさせます。


脇山:地域おこしは人材補充ではなく、その人の人生を左右することだと心得ています。だから、町に滞在している期間だけでその子たちを一人前にする覚悟を持つことが、何よりも大切です。受け入れる覚悟ですね。


どの地域からくる人も全て大切な人です。そういう人たちが新しい風となって、まちに刺激を与えてくれます。本気でまちを良くしようと動いてくれるその人たちの熱量によっては、あっという間にまちに溶け込めると思います。そしてそこで培ったものが一生のつながりにもなっていきます。



平野:那須さんにお伺いしたいのですが、関係人口側の当事者として、まちに関わっていくことの大切さや意味を教えてください。


那須:外部の人が来てくれることは、まちの人にとって嬉しいことなのだろうなと思っています。私が行くたびに、「おかえり」と温かく歓迎してくれて、そういうまちの人の想いが伝わってきます。


関係人口側からすると、受け入れてくれる地域の人がいて、その人たちに会いに行くことが、地域へ行く意味になっていたなと。結局は人とのつながりだと思っています。


平野:南三陸町の人とのコミュニケーションで工夫したことはありますか?


那須:いつもなるべくありのままの自分で会話をしています。気軽に話しかけた方が、意外とコミュニケーションが上手くいったなと感じます。


もちろんなかなか上手くいかない場合もあります。まずは心を開いてくれる人から輪を広げていくことがコツかなと思いますね。


持続可能なまちを目指すことで、より良い暮らしにつながる。知ってもらうことが関係人口創出の第一歩


平野:脇山さんは、関係人口の人たちとどう関わっていきたいとお考えですか。


脇山:持続可能なまちにするためには、持続可能な漁協と持続可能な観光作りの双方が必要になります。


まずは朝日町を知ってもらう必要があります。知ってもらって初めて、「住む」という選択肢も出てくるんですよね。


朝日町には、魅力ある食と「春の四重奏」や外から来られた大学生の地域活動などによってプロモーションに力を入れてきた観光があります。イベントやマルシェなどを通して楽しさを共有し、また来たくなる関係性を作ることが大切だと思っています。その先の「移住」に関してはまた別のチームがあるので、そこにお任せしています。


平野:持続可能であることが大切ですね。ちなみに現在、漁協の課題はありますか?



脇山:課題は三つですね。一つ目は地球温暖化による、魚の入れ替わり。二つ目は、魚価の低迷です。日本人の魚離れが起き、魚を食べなくなったんですね。その理由として、20年前に比べると日本人の給与は今の方が安いんですよ。


だから当時の金額で魚を売っても売れないわけです。給与が減ったから魚も安い金額で売られるようになってしまったのが大きな課題です。


三つ目は、人口減少。魚価の低迷をはじめとした一次産業の収入が、昔に比べて低くなっているので、東京都と比べると収入差が生じてしまいます。だから人が外に流れていってしまう悪循環になってしまっています。



だからこそ、持続可能な漁協づくりが必要です。そのためには、「人」「しっかりとした収入が得られるビジネス」「楽しく生活できる拠点」をちゃんと組み立てることができれば、地域での暮らしも良いものになると思います。


時間とお金を投資するのは、将来も一緒に何かを作り上げたい想いから


平野:脇山さんはご自身のお金や時間を投資して、関係人口の受け入れ側として活動することに、どのような将来性や価値を感じていますか?


脇山:元々は関係人口を増やすのが目的ではなく、赤字だった漁協の再生を頼まれたのがスタートでした。自分自身が漁協の代表としていろいろ取り組んで行くこと自体は、性格上嫌ではなかったし、楽しんでいましたね。


朝日町泊漁港から出漁する様子


脇山:お金よりも、今一緒に頑張っている子たちと将来も一緒に作りあげられたらいいと思って取り組んでいました。


ある程度まちの規模が小さくないと行政の力を借りるのもなかなか難しいものです。私が行政とも良い関係で活動できているのは、朝日町が徐々にそのような状況になっているのと漁協間が連携できる関係性があるからです。


若い人たちには背中を見せないと着いてこないと思って取り組んでいます。この先10年を担い手を育てて若い人たちに引き継いでいこうと思っています。その時にベストな状態で渡したいと思っているので、これからもどこまでやり切れるか楽しみです。


平野:那須さんは、地域の関係人口として、何か将来のビジョンはありますか?


域外の学生が南三陸町でイベントを行っている様子


那須:私は将来カフェをやりたいと思っています。若い人たちが地域のために集まる場を作りたいです。


以前、宮城県南三陸町を訪れた際に、若い方は就職を機に外へ出て行ってしまうことを知りました。地域の若い人たちは私自身が出会ってきた「まちの魅力ある人たちに出会っていないんだ」とそこで気づいたことがきっかけで、カフェをやりたいと思いました。そういう人たちをつなげる出会いの場が増えたら素敵だと思っています。


オンラインではさまざまな地域の人とつながりが持ちやすく、キーマンにも会いやすいメリットがある


平野:ここからは、一つのお題についてお二人にお伺いできればと思います。緊急事態宣言の影響で、非対面で人と話す機会が増えました。このようなオンラインでのメリットは何だと思いますか?


脇山:コロナが流行りだした頃に、オリンピックの影響もあって魚介類加工施設を立ち上げたんです。そこで商品化をおこなって販売することができていることは、コロナ禍だったからこそ上手くいったと思っています。


本来であれば、町に来て購入してもらうはずのものが、インターネットで購入する人が増えたんですよね。しかも、美味しいことを知ってもらえればリピーターになってくれます


那須:私は、2021年に福島県の小さい町の農家さんとオンラインで地域の魅力を発信するイベントを開いたことがあります。通常は、足が運べる現地の人しか参加できないイベントだったのに対して、オンラインイベントに変えたことによっていろいろな地域から参加者が集いました。


福島県のイベントに大阪府、島根県や東京都などから参加していただきました。地域や場所を選ばずにイベントに参加できることと、その人たち同士が交流できる場になったことがとても良かったですね。


リモートでの関わりが増えたことで、いろいろな地域の人や新しい人と交流する機会も増えたと思います。それがオンラインのいちばんの魅力だと感じます。



「実践型インターンシップ」と「地域実習」にはそれぞれ良さがあり、充実度は参加する側の本気度によって変わってくる


平野:「実践型インターンシップ」と「地域実習」について、違いなどを教えてください。


那須:私はどちらも経験があります。実践型インターンシップは、復興庁の復興・創生インターンシップから宮城県亘理町と大和町で1ヶ月間参画しました。企業の抱える課題に対して、社員の方々と同じ立場で意見交換をすることがあり、学生に対する企業側の期待値も高いと感じます。


それに対して、地域実習は大学の守られている環境の中で地域について学ぶ感じでしたね。地域実習は企業という形で地域に入り込むのではなく、地域での暮らしを体験しながら地域が持つ課題に取り組むので「暮らしを知る」ことができる感覚です。



脇山:受け入れる側の意見としては、来る人たちの本気度によって関わりかたは変わると思います。数年前に朝日町に来た昭和女子大学の学生たちは、独自で宮崎地区のヒスイ海岸で「海の家」と砂浜で実施した映画祭「星空のナイトシアター」をまちの活性化の起爆剤として位置付けて主体的になって参画して、お金を寄せていくことに苦労しながら自ら経営の大変さを学んでいましたね。



平野:最後は、脇山さんから朝日町に興味を持ってくれている方々へメッセージをお願いします。


脇山:私は、朝日町に関わってくれている大学生の皆さんや、地域活性化起業人(令和2年度までは地域おこし企業人制度)による都市部の企業から派遣された方たち、そして地域おこし協力隊制度と言った国の支援によって来られた皆さんにエンジンをかけてもらって活動しています。そういった方々と一緒にまちを客観的に見ることができるようになった時に、ここはやはり観光と一次産業のまちだと意識してます。


まずは朝日町に来てもらって、三つ星レストランに行かなくても食べられる美味しいものがあることや、綺麗な町並みや観光地があることを知って欲しいです。最終的にこの町に住んでみたいと思ってもらえたら嬉しいですね。



結び-Ending-

町が元気になっていくためには、地域の中と外の人が互いのつながりを大切にすることが一番重要だと再認識する機会になりました。いますぐ何か大きなことはできないかもしれませんが、まずはその地域のことを知ることが関係人口を築いていく第一歩ですね。


地域のために動きたいが何をしたらいいか分からない、そんな方にこの記事がお役に立てばと思います。

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■企画・著作
工藤 菜穂(Naho Kudo)
過去より今。今より未来にワクワクする人生にするために
インプットとアウトプットを繰り返し、
将来は女性選択肢が増える社会づくりと、
地方・地域の魅力発信のブランディングのお手伝いをしていきたい。

【取材データ】
2022.05.04 ※ハイブリッド取材
【監修・取材協力】
JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合)
脇山 正美様
那須 彩乃様

※現地取材においては感染対策を徹底の上、取材を行っております。

【資料提供】
鈴木 里奈様
取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。