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農と人-Interview-

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地域に新しい風を吹き込むことで外部人材も活動できる場づくり
~まちで旗振り役を担うことが内発的な地域づくりの方法~

高知県宿毛市

今回は森下 結季子さんに
お話を伺いました
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写真右>森下 結季子(もりした ゆきこ)さん:農家に嫁いだWEBデザイナー

愛知県岡崎市出身。高知県宿毛市在住。2022年家族4人で高知県宿毛市へUIターン移住。土佐文旦つくりながらアナログからの改善に奮闘。フリーランスと田舎暮らしを楽しむ。デザイン・WEB制作・コンテンツプロデュースが得意分野。

※左は娘さんで背後の文旦の木は娘さんが生まれたときに植えたもので今年はしっかりと果実が実っていた。

ぽめろん果樹園/森下農園
https://pomelon-kochi.com/

地域に外部人材、いわゆる関係人口となる人々を受け入れ、そこに新しい風を吹き込むことは、近年全国のいろいろな地域で行われています。


一口に関係人口の受け入れと言ってもその形態はさまざまあり、それらについて考察することは、今後必要不可欠なことではないでしょうか?


中でも、高知県宿毛市で文旦農家として活動されている森下 結季子さん(ぽめろん果樹園/森下農園)は、地域外からの人の受け入れに関心があり、今後の活動に積極的に取り入れていくそうです。


本記事では、ご本人の体現して思うことから未来のビジョンを別の角度で取材した地域コーディネーターのお話と擦り合わせて、森下さんの想いや価値観の部分にも迫っていきます。

外部人材を受け入れ、空き物件を多目的に活用することで、最終的にシェアハウスのような形態にしていきたい


愛知県西尾市から夫の実家がある高知県宿毛市に移住した森下さんは、義両親が営んできた文旦農家を継ぐため、自らがよそ者視点で考えながら日々奮闘している。


「愛知県出身の森下です。私はまちの外からくる人の受け入れに興味があります。私の住む宿毛には文旦農家が20軒以上あり、4月末から5月頭の繁忙期には、各地から日雇い労働者が来て、農園の仕事を手伝っています。


その時期は私のところの農園も忙しく人手が欲しいので、まずはその期間に滞在してもらう場所として、空き物件の活用をしてみたいと考えています」(森下さん)



繁忙期以外の期間も、何らかの形で農園を盛り上げていきたいとしている森下さんはWWOOF Japanに農園を登録し、ファームステイして下さる人を募集し、その滞在先にしたいと話しており、親子で参加できる体験ツアーやワーケーションをする拠点にすることも考えてる。


また、自分の得意分野や前職で培ってきたスキルを活かして地域のために役立つことができたらと考えているという森下さんは自身の携わる果樹園のことだけではなく、まちの行事や地域観光のPRにも興味があるそうで、宿毛市にはまだ地域メディアがない中で、自身のブログをソーシャル化したいとも話す。


森下さんの個人サイト


農業だけにとどまらず、さまざまな角度から地域を盛り上げたいと考えている森下さん。どこの地域にも、プロモーションや広報を担う人がいる。そういった人たちと連携しながら活動を進めることで、新たな分野にもチャレンジできるに違いない。


活動を通して選択肢を増やすことで、誰かの人生の幅を広げることができる


森下さんは、活動をしていく上でどのようなビジョンを持っているのだろうか。


「私たちの活動を通して、誰かの選択肢が増えたら良いなと思っています。働き方だったり、人とのつながり方だったり、どんな形になるかは分からないのですが、私たちが新しい試みを体現していくことで、地域の人たちや農園に手伝いに来てくださる方たちにも”そういうことができるんだ”と思っていただけるかなと」(森下さん)


そこに新たな生き方・選択肢の一つになることを起こしていきたい想いがあると言う森下さん。彼女たちの活動が起爆剤となり、地域にとって良い化学変化が起きていくのではないか。



最近では、地域外からの学生を主体とした若者の受け入れに積極的な流れも生まれており、特に目を引くのは夏休みといった休み期間を利用して行うインターンシップだ。中でも、NPO法人ETIC.主催の実践型インターンシップ*1は全国の地域を対象としており、ここに留まらず「よそ者」を受け入れる土壌が広がっている。


*1実践型インターンシップ…従来の見学型・体験型のインターンシップとは異なり、実際に日本全国の地域企業やNPOの経営者の右腕となり、新規事業や商品開発などにチャレンジする長期的なプログラム


実際に地域で受け入れる側のコーディネーターを取材した時にも、働き方について”出口のある雇用が重要”といった話を聞いたことがある。同じ会社で働き続けるのではなく、学びのための出向やママさん向けに3時間だけ働ける場を作ったりといろいろな人が働ける環境を提供できる職場は強いそうだ。


一人一人が自分らしく生きられる社会をつくりたい想いから、地域で実践型インターンシップをコーディネート


だが、地域外からの人を受け入れる土壌作りも重要だ。特に学生といった若い人材は環境の変化には敏感で、地域を知ってもらう良い機会だが、地域に行くことから移住に結びつけたり地域を盛り上げるために行うものではない。重要なのは、一人一人が自分らしく生きられる社会を創ることなのである。


また、画一的な雇用ではなくて、いろいろな人を活かす能力を育てられる企業になり、自然とそこに人が集まってくる。そういう企業が増えることで、地域で自分らしく生きられる人も増えて、実践型インターンシップが地域の成長にコミットするのではないか。


訪れる若者が地域の魅力に触れて感動することもインターンシップの魅力

(写真提供:曽根 裕恵さん>地域コーディネーター)


重要ではあるものの、緊急性が低いものに取り組んでもらうことで、プロジェクトが成功に近づく


では、実際に企業や団体が域外から人を受け入れる場合、ミッションやプロジェクトはどのように動機付けられて意思決定されていくのだろうか?


「まずは私たちが仕事を覚えないといけない。でも、皆さん良い意味で職人気質なので、基本は”見て覚えろ”なんです。だから、教えることに時間を割くことが手間であり難しいところです。


インターンをやってみたいけど、自分たちもノウハウがまだまだなので、人に教えることは難しく、課題かなと思います」(森下さん)



”インターン”という言葉はまだまだ地域に浸透しておらず、職業体験から職場見学もそう呼ばれることもあり、あまりにも余白が大きい。しかし農園の仕事をしてもらうだけなら通常の求人で良い。


実践型インターンシップは業務ではなくて、課題を解決するためにあり、森下さんの場合は農作業にこだわらず、プロジェクトとしてたてるべきは”重要ではあるものの緊急性が低いもの”に取り組んでもらうのが、成功の秘訣だということだ。


受け入れ先のトップがやりたいと思っていても、緊急性が高くないため放置してきた課題や企画を、インターンシップを取り入れることで、優先順位を高めて本気で取り組めるのが実践型の魅力である。


その地域の規模感に合わせたブランディングの仕方を選ぶことが重要


肝心のプロジェクトを進めていく中で、自社のブランディングや既存勢力との差別化で生き残る術を考えていかなければならないだろうが、その辺りについてはどうだろうか?


「自社ブランディングもしていきたいところなのですが、冒頭で話したように20軒ほど同業者が集まっているところなので、自分のところだけ良くすることを考えるのではなく、文旦ファンを増やしたいと思っています。結果としてブランディングを通して文旦自体の知名度を上げて産業を押し上げたいです。



また、周辺地域にはうちの農園名と類似するところがありますので、SNSを通して新しい農園名を募集して、差別化も図りたいと考えています。このように、あらゆる形で人を巻き込んでいきたいです」(森下さん)


人口が少ないまちになればなるほど、周辺との協調性も重視して合意形成が重要だ。どれくらいの人口規模のまちで事業をやるかによって、見られ方や見せ方を変えていかなければならない。


外部人材を受け入れる側の意識として大切なことは、無理やり囲い込もうとするのではなく、まずそこ住んでいる人たちの本気の姿勢を見せること


ところで、外部人材を受け入れる側の意識として大切なことは何だろうか?コーディネーターの取材を通して分かったのは、学生のうちは、困っている人を助けたい、地域のために何かしたい、社会の役に立ちたいなど言葉にすると思うが、それらを表現するに至った動機付けはどこから生まれてくるのかを具現化して、行動できるようにすることだ。


意思決定なくして大人たちが”私たちの地域に住んでほしい”と学生たちに訴えかけるのは、間違っているのだ。


できることなら彼らには自由に旅をさせて、セカンドキャリアの段階で”このまちは良かったな”と思い出して戻って来てくれたらいいぐらいの感覚でいることが、受け入れ側としては重要な考え方であり、学生を無理やり囲い込むのは、窮屈に感じて足が遠のき、結果として疎遠になってしまうはずだ。


移住者がどんどん集まっているまちが魅力的な理由は、ブランディングやプロモーションが上手いから人が集まっているわけではなく、自分ごととして捉えて本気で地域を良くしようと動いている人たちがいるからで、住んでいる人たちが本気で取り組んでいる姿勢を見せることが大事なのだ。



一人一人がやりたいことを実現していくことで最終的に地域活性化につながる


では、世間で話題となっている「地域創生」とは何だろうか。思うのは必ずしも地域を何とかしなければという「マスト」ではないことで”地域のために”という言葉が先行しない方が良い。ちゃんと想いを持って活動していく人が地域に増えていけば、結果的にそれが地域のためになっていく。地域創生とはそう言ったもので生まれる副産物なのではないか。


「最終的に地域のためになれば良いけど、現状としてはまだ個人にフォーカスしているというか。人を外から呼び込むことに関して、地域のためというよりは私自身がやってみたいことを、先陣を切ってやってみるべきだと感じました。そういうことをやってみて、結果的に地域のためになったり、誰かの新しい発見になればと考えています(森下さん)



結び-Ending-

これから地域に外部人材を受け入れてみたい森下さんと、地域コーディネーターのお話を聞いて、ただ関係人口を増やすだけでは地域は良くならないのだなと感じました。


その地域に合った呼び込み方・受け入れ方があること、またそこに元々暮らす人々の地域を良くしたいモチベーションが鍵になってくるのだと学びました。


私の暮らす石川県加賀市では、外部人材の受け入れ・活用が盛んに行われていますが、その人たちに本気度を求めるだけではなく、自分のような地元の人間も、本気で地域を変えたいと思うことが、地域を良くするポイントなのだと感じさせられた取材でした。

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■企画・著作
北嶋 夏奈(Kitashima Kana)
石川県加賀市在住のネイティブなプレーヤー
加賀市民の全てが「加賀最高!」と呼べるまちにすることが願い。
好きなことは文章を書くこと、写真を撮ること。

【取材データ】
2022.5.31~2023.1.6
【監修・取材協力】
ぽめろん果樹園(森下農園)
・森下 結季子様
Cultura
・曽根 裕恵様(地域コーディネーター)

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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