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三重県松阪市(飯南・飯高地区)
衣・食・住とヒト・コト・モノを通して飯高・飯南の魅力を伝えたい
~中山間地域での豊かな暮らしの先に見えるものとは~

平成の大合併で都市部と中山間地域が結びつき、より良いまちづくりを目指す地域が増えている今日。私の住む地元でも同じことが言えます。しかし課題はとても多く、試行錯誤されている地域は少なくないのではないでしょうか?

 

本記事では、三重県松阪市の中山間地域にあたる飯高・飯南地域で、地域住民や高校を巻き込んで地域活動をされている横山 陽子さんを取材。全国的にも深刻な問題となっている空き家問題についてお話を伺うとともに、横山さんの活動や暮らしについても掘り下げながら行った、弊社インターン生とのトークをお届け。

 

中山間地域で人とのつながりを大切にしながら豊かな暮らしを築く秘訣とは?

余白のある幅広い地域活動が空き家利活用や食に関わるイベントを生み出す

平野(モデレーター:以下、省略):今日はよろしくお願いします。まず、横山さんの活動内容についてお伺いできますか?

横山さん(以下、敬称略):現在、総務省の地域おこし協力隊制度を利用して2年が経ち、任期は残り1年となりました。

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横山 陽子(よこやま ようこ)さん: 三重県松阪市役所 企画振興部 地域づくり連携課 会計年度任用職員/岐阜県多治見市出身。20年間名古屋で経理事務を経験。その後、自然食品店などで勤めた後、ご主人と一緒に総務省の地域おこし協力隊制度を活用して三重県松阪市飯南町へ移住。食に関わる活動や空き家に関わる活動を行なっている。

横山:着任1年目の頃は、新型コロナウイルスが流行する前だったので、地域イベントの開催を中心にいろいろと活動していました。

 

その中で、空き家の掘り起こしや移住希望者への空き家案内、また三重県立飯南高等学校の魅力発信を主に行なっていました。

 

松阪市の地域おこし協力隊の場合、特に決められたミッションがないため、興味関心の強い食に関する活動もしています。

 

飯高町の奥で、88歳の女性の方がエゴマの灰汁を使用したこんにゃく作りをされていて、その魅力にすっかり取りつかれて作り方を教わりました。


今は私もそれができるようになったので、先日伊勢のおかげ横丁で講師として招かれたのですが、大変好評だったので残りの任期でこんにゃく作りもやっていきたいと思っています。

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横山:他の活動としては、移住者と地域のお母さんや行政が連携して、飯高町の波瀬(はぜ)地区でワンデイカフェというマルシェも開催しました。コロナが落ち着いたら、また開催する予定です。

キーパーソンを関わりしろにしながら地域への浸透性を深めることと、三者の関係性を連携させることが地域活動を成功させる秘訣

平野:ありがとうございます。横山さんの地域との関わり方について教えていただけますか?

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平野 彩音(ひらの あやね):大正大学 地域創生学部2年 町おこしロケーションタイムス インターン/三重県松阪市飯高町出身。三重県立飯南高等学校在学中に空き家片付けプロジェクトなどに取り組み、卒業後も地域と関わりを続けて空き家問題などの地域課題に取り組んでおり、その活動が注目され、「地域人(地域構想研究所 地域人)71号」で取り上げられる最近はweb「空き家活用特集」での情報発信も行いながら、町おこしロケーションタイムスの空き家に関わるプロジェクトに参画中。

横山:先ほどお話ししたワンデイカフェを企画していた時のメンバーが、地域のネイティブな方と、移住者、そして私の3人だったのですが、三者の関係性がすごくしっくりきてバランスよく動くことができたので、ワンデイカフェは大成功したと感じています。


また現在、田んぼを借りて機械に頼らず手作業でお米作りをしているのですが、それも三者の関係で進めており、それが地域活動で成功する秘訣ではないかと考えています。

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平野:地域との関係性は大事ですよね。その中で大変だったこともあると思うのですが、いかがでしょうか?

 

横山:移住して来たばかりの頃は、近所の方々に頼りすぎてしまった部分があり、どんな関係性がいいのだろうと試行錯誤した時期がありました。結果として、程よい距離感が大事なんだなという結論に至りました。

 

自分でやれることはやるようにして、周りを頼りすぎないように心掛け、今では近所の方々とも良いお付き合いをしています。

 

あとは野菜とかをいただいたりするんですが、都会では味わえない有り難さでもあり素直に感謝しており、その気持ちを伝えるように心掛けていると、地域の人とすごく良い距離感で過ごせるようになりました。

 

平野:移住してきた当初、地域に入っていけるようにおつなぎしてくれた方はいましたか?

 

横山:最初は行政の方に連れて行ってもらい、いろいろな方に挨拶をしました。


また、先ほどお話ししたワンデイカフェで関わってくださった地域のお母さんが地域のキーパーソンでもあり、人脈がとても太く、お母さんのところに行くと多くのつながりを得られます。

地域の高校生たちと協働しながら、空き家バンクに登録できる物件を生み出すこと

平野:そうなのですね。横山さんは飯南高校とも関わりがありますがその辺りもお伺いできますか?

 

横山:今一番関わりが深いのが、應援團circleの子たちです。應援團circleとは、空き家の片付けプロジェクトや、木の手帳の作成・販売をしているサークルのことです。

 

空き家バンクに物件を登録するために内部の片付けをして、空き家を使える状態にする必要があったのですが、應援團circleの子たちに手伝っていただけないか声を掛けたんです。

 

すると、快く楽しそうに皆さんが参加してくださったんですね。結果として、空き家バンクに登録になったことが私もすごく嬉しくかったです。

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横山:あとは、應援團circleの子たちと、空き家でカフェができないか皆で考えているところです。

 

それから、空き家関係では、このまちに移住されてきたもう一人の方が空き家を購入したんですが、「もしかしたらその空き家でカフェができるかも」という話になっています。今後それも楽しみですし、引き続き皆さんと空き家の利活用のために片付けができたら良いなと思っています。

空き物件の家財整理や譲渡が大きな課題の中、サテライトオフィスへの利活用の事例から見る空き家の可能性

平野:そうでしたか。飯高・飯南地域の空き家の状況はいかがですか?

 

横山:コロナ禍の影響で、空き家を探している移住希望者が多くて、問い合わせも増えている中、空き家バンクに登録されている紹介できる物件の数がまだ少ないのが現状です。

 

空き家バンクに登録されるとすぐに見学希望の問い合わせが来て、入居者ですぐ埋まる状況ですので、空き家の登録物件をもっと増やしたいのですが、物件に家財が残っていたり、時期によって必要とする理由があったり、見知らぬ人と物件を売買・貸借することに対してご家族の中で同意が得られなかったりと、なかなか一筋縄ではいかないことが課題でもあります。

 

しかし、「20代の夫婦や若い子供さんがいる人たちが探しています」と言うと「それなら良いよ」と言ってくださる方もいるように、声掛けの仕方次第で状況が変わってくることもあるので、コミュニケーションも工夫していきたいです。

 

平野:空き家の利活用の事例はありますか?


横山:元々、空き家だったところを改修しまして、2021年1月に飯高町にある珍布峠(めずらしとうげ)の入口にに珍布サテライトオフィスができました。レンタルオフィスやコワーキングスペースとして、ワークショップやイベントなども行える環境です。

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地域の人の共感を得られやすい内容の情報発信が新たなコミュニケーションを創発する

平野:飯高・飯南地域の情報発信で、工夫していることはありますか?

 

横山:InstagramやFacebookなどSNSを使って情報発信をしています。田舎暮らしをしたい人たちがターゲット層であり、飯高・飯南地域の日常の暮らしや季節の家仕事、それから自然の美しさや空き家の情報などを発信するよう心がけています。

 

あとは、毎月発行される広報の中に地域おこし協力隊の活動日記のページを設けていただいており、そこに伝えたいことを日記のようにして書いています。

 

この地域にはSNSが使えないお年寄りの方も多く、その広報を読まれる方が多いので、なるべく活字を少なくして写真を多くするよう意識しています。


内容としては地域の人の共感を得やすいことを書いています。例えば、干し柿を作ったことや、ヒルに噛まれたことなど、田舎暮らしならではのことですね。そうすると地域の方から「あの記事読んだよ」と言っていただけて、そこから新たにコミュニケーションが生まれます。

地域での豊かな暮らしの先に見えるものとは、小さな経済力でも温かみのある豊かな生活ができること

平野:横山さんが思う「豊かな暮らしの先に見えるもの」とは何でしょうか?

 

横山:名古屋に住んでいた頃は、自分でお金を出せば何でも手に入る環境でしたが、近隣住民との交流も全くない状態でした。

 

こちらに移住して来て、まず隣の人に挨拶に行くと、帰り際に野菜をいただき、人とのつながりの濃さを感じました。最初は慣れない部分もあったのですが、地域の皆さんに支えられて今は本当に心地良い暮らしをしています。

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横山:そして何よりも素敵だと思うのは、野菜を自分で作ったり、近所の方からおすそ分けをいただいたりと小さな経済力でも温かみのある豊かな生活ができるようになったことです。このような人とのつながりが、いざ困ったときにすぐ助け合える関係性になれることではないかと強く感じています。


平野:地域の方と交流すると、身も心も豊かになりますよね。地域課題の解決など特別に意識しなくても、地域の人とコミュニケーションを取ることによって、それがやがて課題解決や地域の人の想いに応えることにつながっていくと感じます。

自然と地域資源が豊かで、人のつながり合いで共助の関係が構築できる素敵なまち

平野:移住を希望される人たちが名古屋や大阪のような都市圏だけでなく、三重県内からも多いと聞いています。その中で飯高・飯南地域の伝えたい魅力を改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?

 

横山:この地域は都市部に比べると本当に自然が豊かです。登山やハイキング、キャンプもできて、櫛田川(くしだがわ)ではカヌーもできます。

 

私の家は朝起きると、目の前に山が壮大に広がっていて、毎朝その風景を見て贅沢だなと感じています。登山に関しても、自宅から歩いて山まで行けるのでそれも魅力的だなと思っています。

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横山:今は特に、夜はとても静かで、虫の声をBGMにぐっすり眠ることができるのも良いところですね。

 

あとは、この地域はお茶が有名で、私の家にも茶畑があるんです。初めて自分たちで育てて収穫して作ったお茶を飲んだらすごく美味しかったです。自給自足に近い生活ができるのも、とても魅力的です。

 

平野:飯高・飯南地域の自然は他には変えがたい魅力がありますよね。最後に、飯高・飯南地域に興味を持ってくださる人たちに向けてメッセージをいただけますか?

 

横山:どこの地域も同じだとは思いますが、人と人とのつながりや、助け合いが大切だと思います。移住希望者のお話を聞くと、誰にも干渉されずにのんびり田舎暮らしをしたいという方も、中にはいらっしゃるんですが、それはちょっと違うのではないかと思います。


やはり毎日挨拶をしたり、話をしたり、会合に出たりとか、そういう日々の交流は欠かせませんし、その積み重ねが共助の関係を生むことになるはずです。

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編集後記

地域に入り込んで試行錯誤されている横山さんの姿から、地域での暮らしにおいて、大切なことは「人と人とのつながり」であると、改めて感じました。

 

何をするにおいても、そういった人とのつながりは大切であり、地域課題の解決にも必要不可欠なことであると思います。

 

暮らすことで身も心も豊かになる、自然豊かな飯高・飯南の地域に私も一度訪れてみたいです。

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取材時のグラフィックレコード:中村 沙絵さん作成。

これからも飯南・飯高町の魅力を伝えていきます!!

企画・著作
北嶋夏奈
北嶋 夏奈(Kitashima Kana)

地域の暮らし・活動に興味あり。好きなことは文章を書くこと、写真を撮ること。

【取材データ】

2021.09.26 オンライン取材

【監修・取材協力・資料提供】

・松阪市役所 企画振興部 地域づくり連携課
​横山 陽子様
・松阪市 地域おこし協力隊


【グラフィックレコード】
・中村 沙絵 様

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。