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愛知県豊田市

つながりを広げて地域課題の共有をすることが解決のヒントに 
~これからの地域企業と中間支援組織ができる地域創生のあり方~

都市部と中山間地域の市町村合併は、これまでいたるところで行われてきました。私の住んでいる石川県加賀市も例外ではありません。合併で吸収された中山間地域はその後、何らかの影響を受けて住民が立ち退いて集落自体が消滅しているところも多いのですが、時代の流れと一括りに片づけていいのか疑問に思うことが多いです。

本記事では、中山間地域の課題を解決すべく、必要な情報や知識、都市部の人材をつなぐことで活性化につなげる取り組みをプレーヤーでもある愛知県の坂部 友隆さん(一般社団法人おいでん・さんそん)と弊社の中野が行ったトークをお届け。

これから求められる中間支援組織の在り方や活動について語りました。

都市部と中山間地域をつないで課題解決へ導く中間支援組織としての役目

中野(モデレーター:以下、省略):まずは、運営されているおいでん・さんそんセンター(以下、センター)の設立の経緯についてお伺いできますか?


坂部さん(以下、敬称略):センターは豊田市が中山間地域と2005年に合併したことを背景に生まれました。

坂部 友隆さん

写真左端>坂部 友隆(さかべ ともたか)さん:一般社団法人 おいでん・さんそん 職員/愛知県豊田市出身・在住。就職を機に地域外に出て上京するも、その後地元へUターン。2015年に豊田市の特別任用職員(現在の会計年度任用職員)として、おいでん・さんそんセンターで勤務。都市部と山村部をつなぐ中間支援組織の一員として日々活動中。

坂部:掘り下げて申しますと、2000年の東海豪雨で、市内を流れる川が氾濫し、市街地が水没の危機に瀕したことがあり、治水をしっかり整備することで水害に強い地域にするだけではなく、道路のインフラや観光振興、森林整備などのハード面に対して財政投資をして地域の振興を図ることが目的でありました。

 

しかし、過疎化という問題には歯止めがかからず、人口減や集落の衰退が課題となっていました。


そこで、ハード面だけではなくてソフト面にも力を入れるべく、財政面以外にも人と人のつながりを創りながら地域課題の解決を図る中間支援組織として2013年に豊田市の機関としてスタートをしました。

共助の関係性づくりが、結果として相乗効果が生まれて地域が元気になっていく

中野:なるほど。そうだったのですね。主な活動内容はどのようなことでしょうか?

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中野 隆行(なかの たかゆき)町おこしロケーションタイムス ファウンダー/愛媛県松山市出身。地域での写真活動を機に出会った地域の人たちの素晴らしい価値観に触れたことがきっかけで、自身の好きな旅をテーマに、全国の地域で暮らす人たちの何気ない姿を価値として発信する地域メディア「町おこしロケーションタイムス」を立ち上げる。地域で、やりたいことに挑戦するひとを応援するために、地域と行政や団体の間に入り、必要な情報や知識、人材をつなぐことにも取り組んでいる。

坂部:都市と中山間地域をつなぐマッチングやコーディネート事業を業務としています。

 

人と人をつなぐことに関して言うと、例えば、草刈りができなくて荒れ放題になってしまう課題があるとすれば、何とかしたいと解決のために参画してくれる人たちがいるように、困りごとを抱く人たちに対して、協力してくれる人たちとをマッチングさせることなんです。

 

特に、都市部の人たちで、本業以外で地域貢献をしたいと思っている人たちを集めて地域にお連れすると、そこで交流が生まれ、共助の関係ができるんです。


都市部と地域の人たちが個別でつながるのは難しいので、私たちが取りまとめる役割を果たすことで、お互いをつないで相乗効果が生まれて地域が元気になっていくと考えています。

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“黒子”に徹することに重きを置き、地域住民が主役となって自らが課題解決を担うことが重要

中野:ありがとうございます。おいでん・さんそんセンターのように、地域の活性化につながる挑戦を応援する中間支援組織というのは、非常に大事な存在だと思っています。その中で普段から活動で意識されていることはありますか?

 

坂部:私たちが中間支援組織として大切にしていることは、私たちが前に出て何か事業を起こすようなアクションは極力控えており、徹底的に黒子に徹するようにしています。やはり主役は地域住民の方々ですし、そういった方々と関係人口をつなぐ役割に重きを置いています。

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中野:なるほど。中間支援組織としての在り方を徹底的に追求されているようですが、今後まちづくりはどのようになっていくとお考えですか?

 

坂部:豊田市でも人口減が進み、地域企業もさらに厳しい経営が求められており、いくら行政が経済的に豊かであっても、それがこれからも続くことではない。

 

もちろん行政に頼る部分もありますが、地域課題を住民自らが解決していくことが、豊かさの指標になっていくと考えています。

 

中山間地域の人たちだけでは課題を解決することは難しいので、それを都市部の人と共創していくことが、地域の人たちの豊かさにもつながっていくのではないかと。

 

豊田市は40万人いる都市部と、2万人しかいない中山間地域の両極端の地域を併せ持つ自治体だからこそ、そういうことが可能なのではないかと考えています。

 

中野:行政に頼らない地域づくりが豊田市の中山間地域で広がっていくのは、すごく素敵なことですよね。地域住民の幸せを作っていくことの副産物として、地域課題が解決されていくのではないかと。

 

行政ではどうしても縦のつながりになってしまうと思うのですが、もっと広がりを見せた行動・動きが必要なのではと感じるのですがいかがでしょうか?


坂部:そうですね。私たちは流域のようなものも重視しています。全国の地理的なところを見ると、大きな川、流域を一つの単位として、経済的なことや交流が進んでますので、豊田市だけに関わらず、下流域のほうや、長野県や岐阜県など、そういう地域の単位でいろいろなことを起こしていくのが良いのではないかと思っています。

自動車産業だけではなく、ベンチャー思考も取り入れながら、さまざまな企業と中山間地域の未来を描く

中野:豊田市だけではなく愛知県全体もそうだと思うのですが、自動車産業が盛んなおかげで、すごく良い暮らしができていると思っています。

 

今後は、自動車産業だけではなく、ベンチャー的な考え方に付随する人たちも未来を牽引していくことが期待されますが、その点に関してはいかがでしょうか?


坂部:そうですね。私たちが、中山間地域で活動している中で、自動車関連の企業さん以外にも来ていただいています。

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坂部:その中で、皆さんにここに来られた理由を伺うと、中山間地域は課題先進地だとおっしゃいます。これから人口減が進む中で、いち早く人が減るであろう地域であり、いろいろな課題を抱えている場所だと。

 

都市部では課題が複雑すぎて、それに対するアクションが一筋縄ではいかない中で、中山間地域の課題に対するアクションから、今後のビジネスの可能性を見い出していこうとされている企業さんはたくさんあります。

 

中野:なるほど。いま具体的に何か取り組んでいることはありますか?

 

坂部:モビリティ関連ですと、小型自動車、小型EVの実証実験のプロジェクトを地域のつなぎ役としてお手伝いをしています。特に中山間地域の方では、高齢者の車問題が深刻で。車を手放してしまったら出かける機会が減り、生きがいがなくなってしまう。

 

いきなり車を手放してシニアカーにシフトするのではなく、その一歩前の小さな電気自動車みたいなものがあると、もう少し段階的にいけると考えて、必要なマシーン開発のような取り組みにも協力しています。

潜在する地域資源を掘り起こし、産・学・民連携で地域を魅力化すること

中野:都市部から離れた中山間地域であっても、地域資源は豊富だと思いますが、そういった事例があればお伺いしたいです。


坂部:ありがとうございます。そうですね。やはりジビエでしょうか。豊田市にも6年ほど前に株式会社 山恵という加工場が完成しました。イノシシとシカをメインとした野生動物の商品開発や、それに関する6次産業化に取り組んでいます。

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坂部:私たちはそのPRのお手伝いをしていたんですが、カレーハウスCoCo壱番屋のフランチャイザーである株式会社ワイズさんから、ジビエ肉を使ったカレーを開発できないかと相談をいただき、連携して商品開発を行いました。

 

商品を世に広めていくために、地元の足助高校の力も借りました。いわゆる産学民連携ですね。カレーハウスCoCo壱番屋のフランチャイザーさん、高校生の皆さん、そして、ジビエの加工場と一体となって取り組み、結果的に3万食ほど売上がありました。


まだまだ中山間地域には眠っている地域資源があるので、それを都市部の人の価値観で魅力化すればもっと良くなっていくと思います。

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結び-Ending-

都市部と中山間地域をつなぐ中間支援組織の存在は、全国的にこれからどんどん必要になってくると思います。取材中、坂部さんが豊田市を「日本の縮図」と表現されていたことが印象深かったです。

 

まだまだ中山間地域には眠っている地域資源があると話す坂部さん。これからの活動にも注目が集まります。

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■企画・著作

​町おこしロケーションタイムス編集部

【取材データ】

2021.09.18 オンライン

【監修・取材協力・資料提供】

・豊田市 おいでん・さんそんセンター

・一般社団法人 おいでんさんそん

坂部 友隆様

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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