レポート | 島根県松江市地域おこし協力隊募集説明会
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三者一体伴走型支援による定住サポートとは
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都会から地方の良さに惹かれて移住者が増えている今、地域によっては定住がうまくいかないこともよく耳にする昨今。そんな中、「定住率が72%!」「協力隊」「松江市」という文字がSNS上を介して目に飛び込んできました!

 

松江を変えるプロジェクトが主催者と何ともエッジがかかった「松江市ちいきおこし協力隊募集【オンライン説明会】」が2020年11月3日に開催。これらの言葉に吸い寄せられて参加した人や興味を持った人はかなり多いはず。

 

また定住率が7割を超えて移住者のサポートも充実しているということに興味を持ち、どんな支えを受けているのでしょうか。


当日の司会は玉造温泉でまちづくり会社を経営している角 幸治さんと移住者のサポート事業などを行う株式会社ちいきおこし代表の河野 美知さんによりアットホームな雰囲気をコンセプトに進行していきます。

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角 幸治(Sumi Yukiharu)さん(左):株式会社 玉造温泉まちデコ 代表取締役/玉造温泉の伝道師。温泉街再生の奇跡を13年にわたり活動しており、玉造温泉が大好きで姫ラボという玉造温泉コスメの販売と通販の会社を経営し、まちづくり事業を行っている。社員が自ら動いてくれる組織づくりに力を入れている。

※玉造温泉まちデコ

http://www.tama-machideco.com/

 

河野 美知(Kouno Michi)さん(右):株式会社 ちいきおこし 代表取締役/移住者のサポート事業を行う一方で、八百万(やおろず)マーケット運営統括責任者でもある。松江のこだわり品を扱うアンテナショップの運営し、地場産品の販売イベントなどを行い地域の発信に取り組んでいる。

​※八百万マーケット(株式会社ちいきおこし)

https://yaoyorozu-market.com/

イノシシハンターとして地域課題に挑む

森脇さんは元々会社員しかしたことがない自分が今では会社を興し、増え続ける獣害という地域課題解決に向けて挑戦し、地域資源への活用を進めると同時に自身の活動を地域内外に発信するべく講演活動も行っている。その中で彼らをなぜ獲るのか?獲る前に獣害を防ぐことができないのかという根本的な問題にも挑んでいる。

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森脇 香奈江(Moriwaki Kanae)さん(左):イノシシハンター。合同会社 弐百円 代表社員/松江市地域おこし協力隊2016年度1期生で現在はOGでありながら、現役協力隊のサポートも行う。2018年11月、同じ協力隊同僚の佐藤 朋也さん(現在はOB)と合同会社弐百円を設立。視認性の高い猟友会支給のベスト姿で登壇の理由は猟師界に対して女性の入りにくさを当事者意識をもって挑むという意気込みを伝えたかったという。

フリーミッションというワクワク感

続いて現在も協力隊として活動を続けている井上さん。フリーミッションという立場でパラレルワーカーとして活動。廃校を活用した取り組みや空き家に眠るモノの利活用などの地域課題に取り組みながら人が注目していない埋もれている課題に挑戦している。着任当初は入りにくいこともあったが、相談できる場が充実しており、手探りしながらも前に進んでいる。

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井上 香織(Inoue Kaori)さん(左):パラレルワーカー。現役の地域おこし協力隊/福岡県出身。協力隊のフリーミッション型というワクワク感で好きなことに挑戦。パラレルワーカーとして地域と立ち上げた水辺空間と周辺の活用やバンブーハンター企画で里山の保全活動などの地域課題解決に取り組む。

広場ニストから見た協力隊のサポート体制

井上さんの後は、広場ニストとして全国で活動し、富山県富山市において、富山まちなか賑わい広場「グランドプラザ」など公共空間の仕掛人として有名でもある山下裕子さんが登壇。山下さんは松江市地域おこし協力隊外部アドバイザーでもある。

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山下 裕子(Yamashita Yuko)さん:広場ニスト。松江市地域おこし協力隊外部アドバイザー/全国に昔からある広場が人が使いたくなるような場所にするために専属スタッフを雇用したものにするための開業支援を行っている。場は世の中にいっぱいあるが、そこにいたくなったりやりたくなる人が増えれば街は豊かになり、暮らしが楽しくなる。そんな伴走役を担う。人が中々気づかないような空間の利用や、居心地が良くなるにはどんなものがあったら良いか。設(しつら)いや使い方の提案をし、人は人が使っている様子を見れば使える場所と認識するものであり、そう言ったイメージをリードする自主企画を地域と一緒に行っていることをサポートしている。

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『にぎわいの場 富山グランドプラザ 稼働率100%の公共空間のつくり方』山下裕子 著

山下さん「二年前から松江市地域おこし協力隊外部アドバイザーに携わっていますが、松江と関わりしろがあることがきっかけで、何度も来訪しています。隊員一人ひとりが、全て違う観点で地域の良さを語っているのがとても印象的です」

 

山下さんはゼロから始めること、つまり、まずやってみることを大切にしながら松江の豊かな水辺空間を利用して実地検証を行ったことがあるが、思いもつかない周辺の状況により、当初定めていた目標をクリア。良い時間を過ごせるだけでなく、場の可能性も体感できたという。

 

このように松江市の地域起こし協力隊は定期的に外部講師を招いてこうしたフィールドワークなどを通じて地域づくりの勉強会も行っている。

河野さん「松江市の地域おこし協力隊は全国から見ても面白い取り組みをされていますよね!」

 

山下さん「そうですね!本当に面白過ぎるOBOGがいらっしゃてて、現役でない隊員も活動に参加されているのが良くて、そんな柔らかい繋がりが強く表れていいなと思います」

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そう話す山下さんはこれまで隊員が実践してきた事例を画面共有通しながら話す。

山下さん「もう一つ凄いと思ったのは『株式会社ちいきおこし』というように専門の支援組織があること。地域外から移住される人は困ったり悩んだりして一人で立ち止まることが多いんですよね。そのような中で相談に乗ってくれるところがあるのが心強いと思います」

河野さん「あと私たちが逆に協力隊の方たちにも事業などで相談したいこともあるんです。外の目線という客観的な考えも知りたいので、私たちは『伴走型』のサポートと呼んでいるんですね」

成果を求められる自治体が多い中でチューニングする時間がしっかり取れていると話す山下さん。プレイヤーをサポートする体制が充実しているのが松江市の凄みとも言えるのではないだろうか。隊員の仕事も大事であるが定住できるよう暮らしをサポートしていくと河野さんも強調していた。
 

中間支援組織の充実と来年度の募集について

続いて松江市役所から地域おこし協力隊の特徴についての説明。

その中で最も注目すべきことは

 

・株式会社ちいきおこし(民間まちづくり会社)

・行政出身者による地域人材育成支援コーディネーター(NPO法人 東出雲まちの駅女寅)

・松江市役所(行政)

 

上記の三者一体型伴走支援という安心できるシステムがあること。つまり行政だけでなく、それらと地域の間に立つ中間支援組織の充実により隊員の定住支援がしっかりとサポートされているということだ。

そしてもう一つは今回の要でもある来年度の地域おこし協力隊募集についてで、松江市は協力隊制度を導入して5年目。松江市の隊員活動は地域課題解決をテーマにフリーミッション型のいわゆる起業型であったが、これまでの隊員が自走化することにより隊員以外の移住者も増えて地域でのプレイヤーが充実。

次年度からはフリーミッションに1名に加えて指定された業務に当たる隊員の募集も行う(以下の拠点で2名)。

※2020年11月13日(金曜)午後5時をもって受付は締切

 

松江工芸の発信支援業務(出雲かんべの里)

・来年度開業予定のショップの企画・運営 

・工芸(陶芸・八雲塗・作家と共創)を活用した事業創出 

・情報発信(個性豊かな作家が多い人たちの魅力発信)

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東出雲町上意東(かみいとう)地区の柿畑と3階建てのユニークな柿小屋

東出雲町上意東地区での地域活動支援業務

「干し柿の里」とも呼ばれるこの地域では現在12の農家が一家総出で柿の製品化における作業に従事。シーズンともなると3階建ての柿小屋に吊るされた干し柿が趣のある光景だが、四季折々を通して魅力ある風景が感じられる柿畑も注目すべき点である。

その中で地域の特色を絶やさず、このような資源を活用して次世代に伝えるための情報発信や事業の創出を目指す。

隊員への質疑応答から地域の良さを知る

最後に質疑応答で参加者から様々な質問が飛び交う中で浮かんだキーワードが「お金」であろうか。協力隊の「活動費」の使い方や生活、そして松江市が認めている兼業についてなど、やはり地域で暮らしていく中で安心できるのがお金に直結するのだろう。

しかし、このとき山下さんがこの日話していた内容を思い出した。

 

小さな経済活動で豊かな時間を作っていて、たとえ売上は小さくても豊かな生活ができるんです。島根県全体ががスローで豊かであり、その要が松江なんです。」

 

お金は「目的」ではなく「手段」である。ある人がこう話していたが、まさにこのことにリンクした瞬間だった。

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編集後記

松江市は何度か訪れたことはあったのですが、どっぷりと浸かったのはここ最近でオンラインツアーという形でした。美保関のツアーを通じて松江を感じるようになり改めてもっと知りたいと思っていた矢先にこの協力隊説明会と出会ったのでした。自分にとっては伺う話すべてがとても新鮮で学びの場になっていてとても良い刺激となりました。

これをご覧になっている皆様もどうか松江市の応援をよろしくお願いいたします。

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Writer:Nakano Takayuki

町おこしロケーションタイムス創設者。

写真や映像を通じて地域を発信し、地域と地域を結び、

人と人を繋ぐ活動を展開。

【取材データ】

2020.11.3 オンライン取材

【取材協力】

・松江を変えるプロジェクト

・株式会社ちいきおこし

​・松江市役所

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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