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北海道栗山町
地域の宝が関係人口創出で楽しく考えられるまちづくり
~空き家再生が「このまちがいいね」と思う形になるために~

旅に出かけたとき、地域に滞在したいと思っても泊まる場所がなくて困ることはないでしょうか?初めて足を踏み入れた土地でも気軽に地域の人たちと交流できる場所があると安心できて、まちのことがさらに好きになるのではないかと思います。

 

本記事では空き家活用から移住・定住、そして、シティプロモーションまで力を入れている金丸 佳代さん(北海道栗山町役場 若者定住推進課)と空き家の利活用に対して情報収集や研究をされている弊社インターン、平野さんとのトークをお届け。

 

栗山町役場の若者定住推進課の軸から幅広いまちづくりによる関係人口創出で地域課題解決へ導く糸口とは。

地域愛を大切に育みながら、3つの軸を元に、若者の担い手育成を目指し、まちの関係人口を創出すること

平野(モデレーター:以下、省略):今日はよろしくお願いします。まず、金丸さんの所属されている若者定住推進課では、どのような活動を行っていますか?


金丸さん(以下、敬称略):私たちは3つの軸を元に、まちの関係人口を見出し移住定住を促進することをミッションとしています。

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金丸 佳代(かなまる かよ)さん:北海道栗山町役場 若者定住推進課 主事/北海道栗山町出身。2014年(平成26年)より同課へ配属。行政職員でありながら、ネイティブな立場で地域住民としてまちを盛り上げたいと活動を続けている。特技は耳コピ。北海島プロジェクト島民。3人の母。

金丸:その軸とは、「移住に関すること、空き家の利活用、そして、シティプロモーション推進」の3つです。

 

若者定住推進課は、若者の人口流出と、転出による社会減を抑え、移住促進だけでなく若者の担い手育成にも取り組んでいます。

 

平野:ありがとうございます。私の地元、三重県松阪市では、自分のやりたい仕事ができる環境が少ない影響もあり、就職や進学で故郷を離れたまま戻って来ない人も多いのですが、栗山町ではいかがでしょうか?

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平野 彩音(ひらの あやね):大正大学 地域創生学部2年 町おこしロケーションタイムス インターン/三重県松阪市飯高町出身。三重県立飯南高等学校在学中に空き家片付けプロジェクトなどに取り組み、卒業後も地域と関わりを続けて空き家問題などの地域課題に取り組んでおり、その活動が注目され、「地域人(地域構想研究所 地域人)71号」で取り上げられる最近はweb「空き家活用特集」での情報発信も行いながら、町おこしロケーションタイムスの空き家に関わるプロジェクトに参画中。

金丸:どの地域も一緒だと思いますが、栗山町でも一度まちから出てしまうと、その後に戻ってくる人は少ないです。


しかしながら、ずっと栗山町のことを故郷だと思ってくれている人たちはたくさんいます。そんな地域愛を大切にしながら、離れていても栗山町に関わりたい人たちとつながっていきたいと思っています。

ふるさと自然体験教育が、環境教育に深く関わるきっかけにまちに対する愛着を深くし、地域で機能していることが大きいこと

金丸:栗山町に愛着を持ってもらうための取り組みとして、ふるさと自然体験教育を30年ほど前から子供たちに向けて行っています。

 

平野:なるほど、それはどのようなものでしょうか?

 

金丸:小・中学校の授業の一環として行われているのですが、栗山町の自然の中で、虫の観察や田植え、そして、稲刈りなどの体験を通した「まちを好きになる」意図を組み込んだものです。

 

子どもたちはその後、成長して大人になってもそれらの原体験が、まちに対する愛着として残っているようで、ボランティアで栗山町の地域活動のために帰ってきてくれる若者も実際におり、環境教育に深く関わるきっかけになったと思っています。地域でこの関係がうまく機能していることが大きいと思っています。

 

環境教育のサポートとしては、コカ・コーラ財団に支援いただいている廃校になった雨煙別小学校を地域住民のべ2,000人ほどがボランティアでリノベーションして、NPO法人が自然環境教育の拠点を作りました。


平野:ありがとうございます。自然環境教育の拠点が、地域の子どもたちと大人のつながりを生む取り組みが素敵ですね。

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空き家所有者に寄り添いながら、地域外の人たちとも安心してコミュニケーションが取れる場を築いていく

平野:ここまでは学校という空き物件のお話を伺いましたが、まちの空き家の現状についてはいかがでしょうか?

 

金丸:栗山町は人口1万1千人ほどの規模ですが、空き物件は約300軒あります。その中にも状態の芳しくない物件もあるのですが、活用ができるものも多く残っています。

 

行政では持ち主に対して、空き物件の所有を続けるか、賃貸・譲渡するのかなどの意向調査を行っております。

 

平野:空き家所有者の中には、接点のない人に家を託したくない考えの人もいらっしゃるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

 

金丸:栗山町の中で、地域外の人を受け入れられる雰囲気ができている人もいれば、そうでない人もいます。

 

行政としては、新鮮な風を送り込むイメージで、新しい人材を受け入れています。どうしても地域に入りづらい方たちには地域の方と橋渡しをし、安心してコミュニケーションがとれるよう、推進していくのがいいのではと考えています。

 

そして、これはまだ構想段階なのですが、地域活性化起業人制度を活用して、東京で空き家の中間支援を行っているコーディネート企業から人材を派遣していただいて、地域の不動産や司法書士などの専門家と連携したチーム作りを考えています。


他にも、就農をしたいと移住されてきた人も栗山町には20組ほどいて、その内の8割以上が定着しています。技術習得も大切ですが、長く住むにはコミュニティに馴染むことがポイントです。特に若者移住推進課のターゲットでもある30代の年齢層が、家族で移住される方が多いです。

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当事者意識で地域と連携し、空き家の可能性を探りながら移住者と伴走して地域に根付けるようサポートすること

平野:起業や地域で仕事を見つけたい方が多いのが栗山町の特徴だと思っているのですが、そんな人たちを呼び込むために意識していることはありますか?

 

金丸:そうですね。栗山町でも、まちに定着してもらうためにはどうしたらいいか、私たちも一緒に伴走しながら考えています。結果としてそれが就業や起業に結びつくことが多いです。

 

例えば、地域おこし協力隊制度を利用して移住された方が現在「合同会社オフィスくりおこ」という会社を立ち上げ、「ゲストハウス くりとまる」や「cafe&bar くりとくら」などを運営しています。

 

そういった既成事実を積み重ねることが、次のステップにつながったり、新たな雇用を生みだすことにもつながります。


平野:ステキな取り組みですね!このカフェでは地域の人だけじゃなく、いろいろな人たちが関わりを持てる場所になっていますね。「くりとくら」や自然学校なども空き家活用になると思いますが、そういった活動に対する金丸さんの想いはいかがですか?

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café&barくりとくらで行われたコミュニティイベント「黒瀬啓介ナイト~雪を溶かすほど熱い夜~」より

金丸:実は、空き家の所有者の方は、当該物件を誰かが使いたいとは思わないだろうと放置している場合が多いのですが、実際には買いたい人も多いのです。

 

初めに行政がやるべきことは、空き家を利活用の可能性を伝えるだけでなく、空き家になる前段階から「空き家になっても利活用できるという意識づけ」だと考えています。


まだまだできていないこともありますが、地域と連携できるよう横のつながりを大切に当事者意識でお話を伺うよう心がけています。

企業とともに歩んで文化財的遊休資源を活かし、持続可能な「観光」という切り口で、関係人口を創出すること

平野:交流拠点施設として、計画されている栗山駅近くの赤レンガ倉庫の整備について伺いたいたいのですが、とても貴重で文化財的な建物ですが、活用となると財源も必要だと思いますがいかがですか?

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金丸:そうですね。『観光の拠点』をコンセプトに関係人口を創出する施設としてまちが活性化するよう、事業として本格的に取り組む必要があると思っています。

 

そこで実績ができたとき、結果として人が集まれる場所になるので、まちの人も潤いが得られて、地域の幸せづくりに通じる場所にできると思っているため町広報を通してもプロモーションしています。

平野:なるほど。そういったまちの声も取り入れていく中で、持続可能なまちづくり事業にしていくためには企業や団体の支援も必要だと思っているのですがいかがでしょうか?


金丸:そうですね。今考えているのは、企業版ふるさと納税が活用できるのではと思っています。去年に税制改正があって、税額控除がまた増えたんです。だから企業としてもメリットがありますし、活動自体がSDGsにも通じる他、まちに興味を持っていただけるのではないかと思っています。

インフルエンサーとともに、まち全体が宿泊施設として機能するよう、空き家の利活用の裾野を広げていく

平野:今後、栗山町の空き家の利活用はどのようになっていくとお考えですか?

 

金丸:そうですね。空き家は活用事例だけを切り取ると良く見えますが、まちの中に点在しているため、観光の観点からすれば車がないと移動がしづらく不便です。

 

そこで、空き家を季節限定で借りるようにして、1箇所に集約させたほうがいいのではというアイディアが聞こえてきたり、町全体が宿泊施設になるのも楽しいと思っています。


実は、栗山町出身のお笑い芸人のバービーさんの夢が“空き家をゲストハウスや宿泊施設にして町全体で宿泊ができる環境に整えること”で、実際に空き家をリノベーションしながら栗山町の情報発信や町おこしにも力を入れています。

空き家活用において、バービーさんが登壇されているカンファレンスの動画の様子

金丸:バービーさんのようなインフルエンサーのおかげで栗山町に興味を持ってくださる方もたくさんいらっしゃいますので、空き家は可能性が広がる場所だと思います。

無いが故に伸びしろがある。資源と課題の掛け算で、プレーヤーが挑戦できるまち

平野:空き家問題に取り組む人や、地域とのつながりを持ちたい人たちに向けて伝えたいことはありますか?


金丸:北海道の中でも、栗山町は観光地というより農業と共生するイメージですが、知れば知るほど魅力が発見できる場所だと思っています。

 

高齢化や人材不足などの地域課題もありますが、栗山町は農産物に恵まれ、北海道最古の酒蔵もあり、そんな魅力あふれる資源と課題を掛け合わせることで可能性が無限大に広がる地域だと思っています。


無いが故に伸びしろがあるんです。地域でチャレンジしたい方は、ぜひ一度栗山町に来ていただけると嬉しいです。私たちも一緒に伴走しながら、共創していきたいです。

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編集後記

空き家問題の解決を考えていく中で、たくさんの人と関わり、関係人口が自然と増えていくのは、理想的ですね。

 

栗山町に関わってくれる人たちと共に悩み、考えていく姿がまさに共創だと感じました。空き家問題や、関係人口、観光などすべて独立しているように見えて一つの線としてつながっていることを強く感じたお話でした。

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取材時のグラフィックレコード:中村 沙絵さん作成。

栗山町の応援をよろしくお願いいたします!!

企画・著作
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工藤 菜穂(Kudo Naho)

学生時代から地域おこしとしてナイトシアター(映画祭)を運営。

地域で頑張る人を発信という方法で応援します。

【取材データ】

2021.08.29 オンライン取材

【監修・取材協力・資料提供】

・栗山町役場 若者定住推進課 若者定住推進G

​・金丸 佳代 様

・腰本 江里沙 様

・栗山町公式YouTubeチャンネル

・くりとくら/くりとまる


【グラフィックレコード】
・中村 沙絵 様

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。