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首都広域圏
オンラインというプラットフォームで生まれる
「おもてなし」の心
​~変わりゆくコミュニティのカタチ~

オンラインという形が当たり前になる中で、今まで私たちが旅先で受けていた「おもてなし」はどのように変化しているのでしょうか。 

 

今回取材したのは、明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部(以下、HT学部)を卒業し、ホテル業での仕事をスタートしたばかりの菊地 彩那さん。

 

大学在学中に携わった「HT学部ワインプロジェクト」や、卒業論文のテーマにしたオンラインツアーを通して感じた「おもてなし」。そして現在働く一流ホテルで感じている「おもてなし」。

 

さまざまな視点から見たホスピタリティの在り方についてお話を伺いました。

おもてなしとは相手の思いや状況に合わせたサービスを提供すること

高いホスピタリティマインドを必要とされるホテル業界。大学でホスピタリティについて専門的に学んだ菊地さんは、ホスピタリティをどのように捉えているのだろうか。


「高校生の頃から観光業界に携わりたいと思っており、ホスピタリティを学べる大学に入学したのですが、当時は親切や心配りというのがホスピタリティなのかなと思っていました」(菊地さん)

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菊地 彩那(きくち あやな)さん:株式会社 森ビルホスピタリティコーポレーション グランド ハイアット 東京 宿泊部所属/千葉県松戸市出身。2021年3月に明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部(以下、HT学部)を卒業。大学在学中は国内外のインターンシップにも積極的に取り組み、HT学部ワインプロジェクトではリーダーを務めた。「学生時代、やりたいと思うことはほとんどやってきたと思います!」と意気込む。

ホスピタリティは、一般的に「おもてなし」「思いやり」という意味で使われる。菊地さん自身の捉え方は、大学の授業やインターンシップなどの活動を通して変わっていった。

 

お客さまのことを知り、思いを大切にしながら、状況に合わせたサービスを提供するというのがおもてなしなのだなと思います」(菊地さん)

どんなに丁寧なサービスでも、相手が必要としていなければ過剰サービスになる場合がある。相手がどのようなサービスを求めているのか、理解することが重要だ。

 

「今は、客室の清掃や、清掃後の客室が実際に販売できるのか確認するスーパーバイザーの研修を受けております。


お客さまがお部屋でどのように過ごされているのかを常にイメージすることで、心地よい空間が作れるのではないかなと感じています。その結果「ありがとう」と感謝されると嬉しいですよね」(菊地さん)

ワインプロジェクトを通し、相手を理解することが人を動かす上で大切であるということを学んだ

おもてなしと真摯に向き合う菊地さん。大学在学中、代表としてチカラを注いだ取り組みが「HT学部ワインプロジェクト」だ。


山梨県にある「白百合醸造株式会社」と明海大学との産学連携企画で、実学を重視している明海大学HT学部のカリキュラムの中でも、特徴的だ。大学が発行している1年間の出来事をまとめた特別版の新聞にも大きく取り上げられた。

明海大学2021年 ニュースレター

明海大学ニュースレターより引用

「この取り組みの素晴らしいところは、ぶどう畑をお借りして栽培からワインの加工、ラベルデザイン、そして、PRや販売までを一貫して学ぶことができることです。

 

イベント販売では、お客さまと直接的なつながりが持てるのもプロジェクトの大きな目的のひとつです」(菊地さん)

プロジェクトメンバーは20歳以上の約20名で構成。代表として、工夫したことも多かったのではないだろうか。

 

「メンバーには、やるべきことを見つけて前向きに取り組んでほしいと思っていたので、それぞれの得意なことや好きなことを事前に知ってから仕事を分担するように心がけていました。

 

やるべきことが見つけられずに、何のためにプロジェクトに参加しているのかわからなくなるような寂しい思いはして欲しくないと思っていました」(菊地さん)

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地域のキーパーソンの思いが、学生にも共鳴し、関係人口創出につながるだけでなく、学園祭を通じてファンづくりも担う

相手が何を求めているのかを知る。菊地さんのホスピタリティマインドだ。

ひと月に1回はワイナリーを訪問し、作業をするだけではなく、近くの桃農園で桃狩りを体験し農園の方と交流したり、富士山に行く学生もいた。

 

山梨県をもっと知って欲しいという白百合醸造の社長の思いも学生に響いたのだろう。社長自らがテイスティングの仕方を教えてくれるなど、プロジェクトに取り組む学生に対する期待感や喜び、信頼感も伝わってくる。

 

「ワイナリーには毎回都合のつく7、8名ほどのメンバーで行くのですが、みんな必ず1年に1回以上は山梨を訪れて、豊かな自然やおいしいものなどの魅力を体感していました」(菊地さん)

メンバーのワイナリー訪問での作業内容やぶどうの成長状況などは常にモバイルメッセンジャーアプリケーション『LINE』のグループチャット機能を通してメンバーと共有していた。

 

「木曜日の昼休みに行う定例会では、『次のイベントはファミリーが多いからジュースを多めに販売しよう』とか、『何本くらい売りたい!暑いからワインを冷やそう』と、主にイベントの話をしていましたね」(菊地さん)
 

出来上がった『めいかいわいんは、学園祭明海祭などのイベントで販売し、山梨の魅力発信にもつなげている。実際に産地で活動している学生が、直接販売をするのだから信頼感も説得力も大きいはずだ。販売に関しては、浦安観光コンベンション協会と連携し、共同で取り組んだ。


「4、5年続いているプロジェクトなので、『めいかいわいん』を毎年買いに来てくれるようなファンも少しずつ増えています。試飲の際に“今年は少し味が違うね”など、お客さまとのコミュニケーションも取れました」(菊地さん)

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菊地さんを中心としたワインプロジェクトの活動は反響が大きく、2021年度のメンバー募集には50名以上の応募が寄せられているのだという。

 

コロナ禍でぶどう畑を訪れる機会が減ってしまった中でも、メンバーで協力しあって完成した「めいかいわいん2020」は、学位記授与式で記念品として卒業生へ贈られた。

 

「これからのメンバーは私たちができなかったことにも新しくチャレンジする可能性があるので、活動が楽しみです」(菊地さん)

コロナ禍で大きく変容したコミュニケーションの在り方から、オンラインの可能性を感じた

コロナ禍において加速したオンラインというコミュニケーションツール。ワイナリー訪問だけではなく、大学生活にも大きく影響している。

 

「オンライン授業が増えて大学に行く機会が減ったので、学位記授与式で久しぶりに再会した友人も多かったです。

 

新型コロナウイルスが流行する前は当たり前に誰かと会えていたことが、コロナ禍で非対面やソーシャルディスタンスが世の中で求められるようになり、当たり前に人と会えなくなったので、対面で会えることの大切さや素晴らしさを改めて実感しましたね」(菊地さん)

授業も仕事も、ネット環境さえあれば好きな時に好きな場所でできるようになった。今回のインタビューもオンラインだ。

 

大手航空会社や旅行会社だけでなく、国や自治体などもワーケーションやリモートワークに注力して、送客、誘客を促進している。

 

「web会議サービス『ZOOM』などのオンラインツールは遠くにいても、つながれるのでとても便利ですが、細かいニュアンスが伝わりにくい場合があるとも感じています。


就職活動もオンラインで行うことがありましたが、就職指導の先生方もオンライン面接を体験したことがないので、手探りの状態でした。すでにオンライン面接を体験した友人などの感想を聞きながら、就職活動の対策をしましたね」(菊地さん)

オンラインツアーという新しいツーリズムの形から、地域貢献・活性化につなげる

おもてなしとは、対面でのやりとりが前提であったように思う。人と会うことを大切にする菊地さんが、卒業論文のテーマにしたのは意外にもオンラインでの「ツーリズム」だ。

 

「何をテーマにするのかすごく悩みました。出身である千葉県の観光について書きたかったのですが、コロナ禍で観光目線の調査ができなくなったんです。どうしようかなと考えているときに出会ったのが、ツアー会社『あうたび合同会社』が実施しているオンラインツアーでした」(菊地さん)

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オンラインツアーの体験を菊地さんが紹介した弊社記事(『あうたび合同会社』が主催するオンラインツアーレポート記事)

リアルな旅が難しい中、新しい旅の形として注目が高まっているオンラインツアー。ネット環境があればどこからでも参加ができる。事前に地域の特産品が届くツアーでは、現地に行かなくても名産品が手軽に自宅で楽しめると人気だ。

 

「オンラインツアーに参加してみて、とても楽しかったんです。病気など何かの事情があって、なかなか旅行できない人でも現地の良さを体験できるし、距離や時間が掛かり気軽に行けない場所も体感できるんですね。

 

私も今まで名前も知らなかった場所のツアーに参加して、地域の魅力を知り、実際に行ってみたくなりました」(菊地さん)

 

少し緊張していた菊地さんの顔がふっとほころんだ。オンラインだからこその楽しみ方やメリットがあるのだと言う。

 

「ペルーのツアーでは、離れた地域に暮らす2家族とペルー在住の親戚が、コロナ禍で会いに行けないために同じオンラインツアーに参加したという素敵なエピソードもあったんです」(菊地さん)

 

離れた場所にいながら同じ旅の思い出を共有できるのは、オンラインツアーならではだ。訪れた地域のファンになれば、応援したい気持ちが生まれたり、特産品を気に入ってふるさと納税をしたり、取り寄せをしたり、地域への貢献や活性化にもつながる。コロナ禍で注目が高まった新しい旅の形に、さまざまな可能性が見えたと言う。

 

「画面上であっても、現地の案内人の丁寧な説明や楽しませようとしてくれる姿に、とても温かみのあるおもてなしを感じました」(菊地さん)
 

オンラインツアーは比較的新しい事業。卒業論文を書くにあたっては、過去実績やアンケート結果などの必要なデータが少なくて苦労したと言う。どんな思いを込めて書いたのだろうか。

 

「コロナ渦が落ち着いてからもオンラインツアーが広く利用されるためには、どのようなツアーがいいのかなど、将来性も含めて卒業論文にしました。読んでくれた方が、オンラインツアーに参加してみたいと感じてもらえたら嬉しいです」(菊地さん)

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おもてなしとは、思いやりとありがとうが連鎖していくこと

オンラインツアーにも、対面と引けを取らない「おもてなし」を感じた菊地さん。現在は、お客さまをリアルにおもてなしする場所で働いているが、未来の自分に対してどんなことを思い描いているのだろうか。

 

「未来の自分がどうなっているか具体的な想像はつかないのですが、どんな状況にいたとしても、日本の良さを伝えられるような人でありたいです」(菊地さん)


観光は各地にある素晴らしい光(名産品や景色などの魅力)を観ると書く。地域の魅力は、一般的に観光地と呼ばれる場所だけではないはずだ。地域でがんばっている人、何気ない景色、積み重ねてきた地域の歴史、すべてが光ではないだろうか。

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最後に、学生時代にやりたいことはやり切ったと言う菊地さんから、ホスピタリティ・ツーリズムを学ぶ後輩たちに向けて素敵なメッセージをいただいた。

 

「コロナ禍などで、やりたいことができなくなる場合もあるので、興味があること、やりたいことがあれば、すぐにでも行動して自分の力にした方が良いなと思っています。

 

厳しい現状のホスピタリティ業界ですが、暗いことばかりではないので、私も自分にできることを見つけたいと思っています。この業界で関われる機会があれば、一緒にがんばって盛り上げていきたいです」(菊地さん)

おもしろそうという好奇心や、将来の自分の力になるという思いが、行動の原動力だと言う。ワクワクすることや自分を成長させることは大事で素晴らしいことだ。


相手の思いを汲み取ろうとしている菊地さんのお話から、おもてなしとは相手を思いやる気持ちが「ありがとう」という言葉でつながっていくことではないかと感じた。

編集後記

コロナ禍でさまざまなことが目まぐるしく大きく変化したように感じています。

当たり前だったことが当たり前ではなくなったことから、やりたいことはできるうちにやろうと思うようになりました。

 

私も観光業界での経験があるので、菊地さんのお話には共感できる点が多く、もっともっとお話を聞いてみたくなりました。改めて、観光の業界はとても魅力的です。

今回はオンラインでしたが、今の情勢が落ち着いたら菊地さんに会いに行きたいです。

がのちゃん
企画・制作:がのちゃん

元地域おこし協力隊。現在は地域コミュニティの活性化や起業者育成、サテライトオフィス誘致などの事業に携わっています。好奇心旺盛な平和主義者です。

【取材データ】

2021.05.14(オンライン)

【監修・取材協力】

・明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部

・明海大学学務部企画広報課

・株式会社 森ビルホスピタリティコーポレーション 人事部

・Grand Hyatt Tokyo(グランド ハイアット 東京)宿泊部

・あうたび合同会社

 

【資料提供】

・株式会社 森ビルホスピタリティコーポレーション 人事部

・明海大学学務部企画広報課

 

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。