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地域で楽しく仕事することが地方創生につながる姿とは
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富山県朝日町。朝日町燻製工場を朝日町漁協と泊漁協が協議会を立ち上げて稼働させようとしている。
 
その中で協力者を探していたところ、昨年9月に東京からJターンという形で町に移住された愛場さんご夫妻が同じ方向性をもってスタートアップに向けて活動されているところを漁協が後押しすることになり、JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合)代表理事組合長の脇山さんが地域内外に発信するためにメディアや人を呼び込み、商品開発をしながら、特産品となりうる燻製製品を世に売り出すこととなった。
結果的に漁協にも愛場さんたちにも将来性を提供し、ウィンウィン(Win-Win)の関係を構築していくのが目標。今回はその愛場さんにお話を伺うことができたのでお届けしたい。

フードプランナー 愛場千恵子さん

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富山県出身

フードプランナー。栄養士・調理師・フードコーディネーター。

東京中心にメニュー企画等、食の仕事に従事。

2019年9月、富山県朝日町へ移住。自然散策と食と陶芸が趣味。

​instagram:asahi_recipe(https://www.instagram.com/asahi_recipe/)

-朝日町に住んでみて

感じたことは何ですか?-

東京にいたときって「インスタ映え」とかでもあるように商品は見た目から入ることが多かったんです。で、それが人気なくなったら次の商品という風な改廃が激しくて、それに若干疲れちゃってたんです。見た目でしか行ってないというか。ちょうど流行りのものが写真に撮られてモノが捨てられているのが社会問題になってたこともシンクロして、そのときの仕事に違和感を持っていました。

 

そんな中、朝日町に来てみて思うのは純粋に美味しい食材がある、調理しなくてもシンプルな素材の美味しさが間近に味わえるっていうのが嬉しいですね。見た目も綺麗にするけど、素材としての美味しさが本物で兼ね備えられているというのが素晴らしいです。

 

あと、去年は親の死と移住と色々重なって疲れていた時期があったんですが、素敵な景色に癒され、気分転換もできたりと、今では地域での暮らしを楽しめるようになってきて、そんな様子をSNSに発信していくことも楽しみの一つになっています。

 

田舎を発信したいって思いもあって、ここにしかない食べ物や自然に触れる楽しみがあるんだよって伝えることによって、東京とかにいる知り合いがここに遊びに来るとか、SNSを通じたつながりで町をPRするきっかけができたらいいなと思んですね。

 

今はコロナの影響で思うようにできないこともあると思いますが、今年は何かやりながら次のステップに向けての勉強する機会を与えてくれたと前向きに受け止めて確実に良いものを出せるようにできればいいかなと考えています。

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-フードプランナーとして

大切にされているものは何ですか?-

そうですね。私は料理人というわけではなく、メニューを世に出すまでの裏方なんですよね。大切にするものとしては、素材を活かしたシンプルな食を表現したいんです。プランニングして素材の調達から調理法や器と組み合わせを考えてレシピを作るというのが凄く好きなんですね。こういうのがあったらいいなぁとか発想して商品として組み立てる工程という仕事として。

 

例えば、東京の人が富山に来てもらった時に富山の食に触れてもらった際、凄く喜んでくれたんです。美味しい商品を提供してみんなに喜んでもらえることを設計し、富山の食をもっと知ってもらいたいという思いもあるのでその思いが伝わる商品開発しながら発信を続けて行けたらと思います。

 

この朝日町で開発された商品が地域を出て東京とか都市部の感度の高い人たちにも選ばれるような商品を作って行きたいです。結果として町を知ってもらうきっかけになればいいかなって思います。

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-登山などアウトドアを

されていると聞きました-

最近、ここ5年くらい前から東京にいた頃にアウトドアを通じて癒しを求めて登山を始めたんですね。それが夫と出会ったとき、彼も山登りが好きで共通の趣味であったこともあり、その世界にのめり込んでいく形になりました。こちらに移ってきてからはそれが日常生活に入り込んでくる環境が身近にあるというのが有り難いかなって思います。

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-インスタグラム「asahi_recipi」では

とても楽しい雰囲気ですね!-

そうなんです。楽しくて美味しいところなんだよ、っていうところを発信して町をアピールしたいんです。

 

写真としてのテクニックはないんですけれど、仕事柄、レシピを作る時も盛り付けて食べ物を美味しく見せるために経験を積んできたので、撮るからにはそう見せないとって思うですね。

それをベースにはあるんだけれども東京にいたときよりも朝日町では、ここにしかないもの、例えば自分で採ってきた食材や自分で育てた農作物といった所に価値があって、そこに更に「美味しさ」という付加価値が加わるということでさらに「魅力」を発信できるのかもしれないですね。

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-これからチャレンジしてみたいこと

についてお聞かせください-

職場内である「なないろKAN」に陶芸工房があって、工房の赤川焼きの野村彰先生ともつながりが出来て、色々教わることがあるんです。東京にいたときも時々陶芸体験に行っていたんですが、今は職場の中に場所があるので、それに触れ合うことができるのが嬉しいんです。

 

私は朝日町のヒスイと海の色で器を製品化に向けて野村先生と活動をしているんですね。

地域外から来られた人にヒスイ海岸を紹介して海の色の器を買って帰ってもらって、実際使ってもらったときに、朝日町の海の色って綺麗だったよねって思い出してくれると嬉しいですよね。作ったものにそういうストーリーが入り込んでお客さんに印象付けができればと思います。

 

先生と共創という形で、海の色やヒスイの色を表に出したくて釉薬(ゆうやく)を調合・試作を続けているんですが、ようやく目指す色が形になっていく感じがして、とてもワクワクしています。色合いを具現化することは簡単ではないんですが、今後は朝日町独特の海の深さの色合いとか、朝日町で見つかるヒスイ独特のイメージが伝わるような器ができればいいかなぁって思います。

 

工房の先生が作るシーズンに合わせた商品に触れるにつれて色々お話もできるようになり、今では信頼性や関係性も構築できてきました。先生の器でまた町に来てもらうきっかけ作りの一つになって行けばと思います。

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-愛場さんにとって

地方創生とは何ですか?-

地方創生って難しい言葉ですけど、そこを意識することなく「地方創生」という言葉の中にいるのではなく、例えば燻製工場でやりたいと思うこと、燻製づくりで東京の人に食を通じて町の魅力が伝わって行けばモチベーションアップに繋がり、また色々やってみたいなってと思うようになることが大事じゃないかと思います。

 

なんか、こういうの疲れるな、しんどいなと思うけど最後までやり切って、そこで一区切りとしてもう終了っていうのではなく、自分に続けられることを楽しんでやっていった方が結果的に地域づくりに結びついていくんじゃないかなって思います。

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お店の情報

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-移住を検討されている方に

メッセージをお願いします!-

そうですね、美味しいものも素敵な景色もいっぱいあるんで、まずは何回か来てみて、この町で暮らしていく中で何を楽しみたいかっていうポイントを押さえて、何をしたいのか目的を明確にすることかなって思います。朝日町は楽しい「コト」と「モノ」の二つがいっぱいあると思いますね(笑)。

 

町の中でどうにかっていうことは考えなくていいと思うんです。何かやらなきゃって使命感に駆られると疲れちゃうと思うので、みんなで面白いとか楽しいこととかやって地域を盛り上げてくのがいいんじゃないかなって思うんです。そう考えたときに、朝日町から富山県全体、さらには近隣自治体レベルで地域の人を巻き込んで行った考え方もあってもいいんじゃないかなって思うんです。その拠点が朝日町でここをベースに東京や大阪、さらに海外に地域の思いが伝わって行けば面白いかなって。

 

私も最初は、あれもこれもやらなきゃいけないって思ってたんですけど、最近はようやく自分のペースが掴めてきて、やりたいことの方向性が定まってきました。

皆さんも移住してはじめのうちは右も左も分からないかもしれませんが、自分の殻に閉じこもらずに活動しているうちに地域の人が色々協力してくれる形にはなって行くと思います。頑張ってくださいね!

編集後記

地域おこし協力隊といった移住者が地域で活動する中で何か使命感に駆られて結果的に疲れちゃっている人が世の中には多くいる。一体何が正しいんだろうと考えたとき、結果的に楽しく暮らしていくことができる環境を築くことなんじゃないかなって思う。例えば近所の人たちと集まってバーベキューとか楽しく過ごす時間にヒントがあるんじゃないかなと。何かを事業をさせようとか結果を強く求めてばかりだと疲弊させてしまう。隊員に定住してもらうために起業を強要するのはハードルが高すぎるように思うのだ。何かに挑戦するプレーヤーを​受け入れる中で、仮にそこで成功すればいいが、失敗したときでもどう考えていけば良いかをサポートしてくれる体制が整っている町になって欲しい。

 

世間がコロナウイルスで疲弊している中、訪れた朝日町。地域でスタートアップに向けてチャレンジされている愛場さんに大きく勇気づけられた。私もできることを躊躇することなく実行していきたい。

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Writer:Nakano Takayuki

町おこしロケーションタイムス創設者。

「旅するPhotographer」の名で

写真を通じて地域を発信し、地域と地域を結び、

人と人を繋ぐ活動を展開。
【日本旅行写真家協会 会員】

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【取材データ】

2020.3.19~3.20 富山県下新川郡朝日町

【取材協力】

JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合)

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

●ロケ撮影地

JF泊(富山県朝日町泊漁業協同組合)

​富山県朝日町燻製加工室

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