2019年2月。北陸富山県で初めて総務省が実施する地域活性化策としてその取組を効果的・効率的に展開する「地域おこし企業人交流プログラム」を導入し、神奈川県の湘南拠点を置く「地元法人・マーチオークシー」から派遣職員として、受け入れた自治体がある。人口1万2千人ほどで日本創生会議から「消滅可能性都市」と位置づけられた町、富山県朝日町。

そのプログラムを利用して一人の若い女性が朝日町に降り立つ。彼女の名前は坂本彩(さかもとあや)。かつて昭和女子大の学生として同町宮崎地区であるプロジェクトを実行した人だ。朝日町が大好きで会社ブログ「今日のおやつはヒスイパン。」で『帰ってきた、アヤ!』のタイトルで町を内外に発信したり地域のPR活動て盛り上げながら神奈川の実家と朝日町で二拠点生活を送る彼女。

一体どんな人なのか、半年間の取材でこれまでの活動を振り返りながら話を聞いた。

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坂本彩さん

アメリカフロリダ州ボカラトン出身。帰国子女。昭和女子大学グローバルビジネス学部でボストンへの留学も経験。また、在学時に学生たちの社会人と関わりをもって何かを挑戦するGirls Dream Factoryという学生団体を立ち上げる。この頃から朝日町へ関わるようになり、「海の家」「ナイトシアター」というプロジェクトを立ち上げ、大学卒業後も地域おこし企業人交流プログラムを活用した湘南の「マーチオークシー」に入社し、まちづくりに関わり続ける。現在は東京を拠点に活動しつつ、引き続き大学時代のメンバーと「星空のナイトシアター」運営に力を入れている。

ー朝日町の地域おこし企業人の業務について教えてください。ー

業務内容は春の四重奏、ヒスイ海岸を中心としたPR活動、地場産品の開発をまちづくりのキーパーソンにサポートしていただきながら行っています。あとは地域おこし協力隊の活動をサポートするといった内容でしょうか。

基本派遣される地域おこし企業人は二人なのですが、そんなに細かな取り決めはなくて二人以上で業務を行う時もあります。また、お盆などのお休みも全員が取ることはなくて交替で休むのでそれらで入れ替わりがあったりすることはありますね。

あとは、ブログでしょうか。朝日町のPRもあるんですが、地域おこし企業人の活動自体があまり知られていないので、私たちがどういう仕事をしてるのか、朝日町がどういうところなのかとか、マーチオークシーが朝日町でどんなことをしているのか、とかを手っ取り早く皆さんに知っていただけるものは何だろうかという事で始めました。

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春の四重奏にて。左は同企業人の保坂さん。

ー朝日町の「ヒスイサテライト」と神奈川の地元で二拠点生活を送っていますが苦労されていること。また、ご両親の思う事について聞かせてください。ー

そうですね、私が朝日町で暮らすようになったのは今年の1月あたりからなんですが、今年に関しては雪が少なかったので困らなかったですが、来年以降がちょっと怖いですね。あとは当初、車が来るまで少し時間はあって徒歩での移動がメインでしたが大体オフィスから歩ける距離で用事を済ますことができたので問題なかったです。それに町の人たちも色々協力してくれたりしましたので助かりましたね。

親についても多分、社会人になってそういう二拠点生活が始まったらきっと心配していたと思うんですけど、学生時代からこの町に来ていたし親も何度も足を運んでくれていたので、心配はあると思うんですけど、大丈夫だろうと思います。

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インタビューを受ける坂本さん。

ー今年で4年目になる『星空のナイトシアター』と

「海の家」の運営について教えてください。ー

ナイトシアターをやっているのは朝日町に初めて来た昭和女子大の現OGで当初は5人で、そこから一人増えて現在6人で活動しています。昭和女子大海の家をやっているメンバーについては私もそうだったんですが、グローバルビジネス学部と英語系の学部が必ず2年生の時はボストンに留学に行かなきゃいけないんで、メンバーの入れ替わりとかもあって指導など運営に関して難しいところはありますが、みんなそれぞれの思いをもって頑張ってやってくれています。

ー地域の方々との関わりで思ったことを聞かせてください。

このプロジェクトの一年目当初は、ナイトシアター海の家をやる準備期間となる8月の頭に表敬訪問という形で初めて笹原町長にお会いしたんですね。そこで役場の方たちと関係性ができて色々協力していただいた流れがありました。でも、今思うのはすごく運が良かったな、と思って。きっとあの町長さんだったから受け入れてもらえてサポートしてくれたのだと。当初はそうは思わなかったけれども今になって思えば、改めて仕事として関わるようになり、また、3、4年町長さんと関わるようになって思うのはあの人だったから、私たちがうまく受け入れてもらえたとか、ちょうど朝日町も何とか変わらなきゃと思っていたタイミングもあった時に私たちが来たから凄くマッチしたのかな、っと思います。

 

海の家の運営については昭和女子大のメンバーに朝日町の宮崎地区の地域の方々も加わって一緒に動いています。地域の方が、開催一年目の時に私たち「ヨソモノ」が宮崎地区のヒスイ海岸を盛り上げようとして頑張っているという話を聞いた時に地元民は何もしなくてもいいのか、という形になり、宮崎地区に元々あったお祭りを復活させたいという話になって海の家をやるタイミングで地域の方たちも「マリンフェスタ」というイベントをやったんです。そこからですね、毎年宮崎地区の地域の方たちとイベントを行うようになったのは。

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夜明けのヒスイ海岸とナイトシアター会場。

ーナイトシアターを行うきっかけを教えてください。ー

当時、海の家だけだと集客は心配だろうと、今のOGに町の人も加わって話をしてたときに、海岸にプロジェクションマッピングで投影させるかとか、水族館みたいなものを作って、とか色々挙がった中に、野外シアターって良くない?って話が出てきたんですね。それいいよね!って話になって。そこで「ねぶくろシネマ」っていう、東京の調布を盛り上げる取り組みをやっているところが浮かんだんです。調布って古くから映画のロケの撮影所があってよく知られているじゃないですか。でも、実は映画を見る環境がなくて、市民に対して映画の町という実感がないと。

それをどうにかしたいというところで気軽に映画を観れる環境を。というので「ねぶくろシネマ」というのを河川敷とかで見られるイベントをやったのが始まりなんです。そこの主催者と私の友人が知り合いで、一度そのイベントに参加してみたら凄く良かったんですね。あっ、これ絶対朝日町でやりたいって思ったんです。それがきっかけでもあるのかなと。

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坂本さんらナイトシアタースタッフがスクリーン背景に記念撮影する様子。

ー今期のナイトシアターのクラウドファンディングで思う事を聞かせてください。ー

今回のクラウドファンディングでは運営費にチケットの販売も含まれるので高額になっています。それは4回目の資金集めになるので見ている人から4回目でまだ自分たちで資金を運用できていないからクラウドファンディングで集めないといけないと思う声もあるんですが、実は3年目までは無料上映みたいな感じだったので、赤字ではないんですが収益性がないんですね。それでは疲弊してしまうため、今年から入場料を取るという形にしました。

 

朝日町で続けていくことがすごく大切で持続可能なものにすると考えた時に、運営費と集客を考えなきゃいけないんです。

決して機材・装飾費用も安いわけでもなく、映画の作品も古い映画で安く済ませようという形でもなく、クオリティーを重視して多少高くてもみんなに喜んでもらえるようにお金をもらっても恥ずかしくないイベントにしている自信はあったんですが、運営費用について言えば、例えばレンタル料は、一日いくらとかではなくて今回のプロジェクトで計算してもらっているんですね。私としては二日間で使うだけのお金にするのはもったいないと思うんですよ。だからそこは効率よく一週間開催した方がいいかなっとか。そうすれば総動員数ももっと増えるでしょうし。

今年の集客目標1000人としているのは、あの海岸で一日当たり入る人数が500人だろうと運営の方とで話をしてて。今年は絶対に目標にしたいという思いはありました。何でそこを目標にするかというとやっぱりそれぐらい人が集まらないイベントにしない限りは、成長がないな、求められていないのではないか、って思ったんです。確かに広報も資金集めも遅かったかもしれないですが、実際お客さんが足を運んでくれなければ何の意味もなくって。そうするとやり方だったり内容を再検討しないといけないのかなぁ、っと思っていて。そういう意味では今年は勝負の年と言う感じではいました。

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ヒスイ海岸イベント終了後、後輩たちと地域の祭りを楽しむ坂本さん。

ーナイトシアターは10カ年計画とか。ズバリ今後の目標は?ー

そうですね。ナイトシアターは、まずは二日間だけでなく、映画祭みたいな感じで一週間以上続けられるような環境づくりをしたいことですね。あとは地域を巻き込んだイベントにして「春の四重奏」があれば「夏のナイトシアター」という形になれる存在にしていければと思っています。ヒスイ海岸のナイトシアターってホントあの雰囲気が好きなんですよ。

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地域住民や協力隊も集まる地域の持ち寄り「ごはん会」に参加する坂本さん。

ー朝日町に移住を希望される方に一言お願いします!ー

食べ物は美味しいし、人も良いし、まずは一度来てみて朝日町というところに触れて欲しいですね。

来てみて食だったり人だったり自然だったりというところが自分に合うのか確かめてみるのが大事かと思います。私としては朝日町が凄くマッチした、つまり私が求めていたものと朝日町が出してくれたものがマッチしたからここまで町と関わりたいと思えるようになったんです。全員が同じかと思えばそうではないのかもしれないから一度確かめるつもりで来て欲しいです。でも一回来ればハマると思いますよ(笑)。

Writer:Nakano Takayuki
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町おこしロケーションタイムス創設者。「旅するPhotographer」の名で「まちづくり人や地域の魅力」を写真で伝える活動を展開。
【日本旅行写真家協会 会員】

編集後記

 

大学卒業後も地域おこし企業人「マーチオークシー」として朝日町に関わり続ける坂本さん。町の取材でご一緒する事が多いんですが、地域の人たちと仲良く楽しく仕事をしている姿が印象的で私としても、また坂本さんだけでなくこの町の人たちに会いたいと思うようになります。

余談ですが、朝日町を紹介する動画(別添付)に登場する主人公は坂本さんにも関連することが多く、「携帯やブレスレット」といった大切なものをなくしたエピソードが「ヒスイ」と置き換えて表現されていたり、主人公の名前に(「アヤ」)が使われていたりしています。よろしければご覧ください。

【取材データ】

2019.4.7~10.9 富山県下新川郡朝日町

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、

関係各位に厚くお礼申し上げます。

●ロケ撮影地

①舟川地区「春の四重奏」

移住定住拠点施設 こすぎ家

③朝日町泊漁港協同組合

④ヒスイテラス

​⑤朝日町東草野神社

​⑥朝日町城山公園